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ジャック・ロンドン「野生の呼び声」

2009-01-23 13:59:38 | 読書

            
 1オンス(約30g)の贅肉もなく、150ポンド(約68キロ)の体重は、すみずみまで闘志と気力にあふれふさふさとした毛並みは絹のような光沢で光っていた。それに幅広い胸と頑丈な前足は、体の他の部分とよくつりあっており、筋肉が皮膚の下で固く盛り上がっていた。この大きな体格と体重は、セントバーナード種の父親から受け継ぎ、外観はシェパード種の母親からのものだった。
 狡猾と知性も兼ね備えていた。狡猾さはオオカミのものであり知性はシェパードとセントバーナードからのものだった。その犬の名前は、バックと言った。彼はアメリカ西海岸サン・ディエゴから遠くないサンタ・クララ渓谷のミラー判事の大きな邸で気持ちのいい日向ぼっこをしていた。その彼に運命の転機が訪れる。
 アラスカで金鉱が発見され、一攫千金を夢見た人々が押しかけた。いわゆるゴールドラッシュである。極寒の地となればソリを牽く犬も必要とされ、ミラー判事の園丁マニエルよってひそかに売られる。
 ここから南国育ちのバックが、鞭と棍棒によって野性に目覚める旅が始まる。幾多の困難に耐えほとんど死に直面したときジョン・ソートンとのめぐり合いが一命をとりとめ、深い愛情の世界を内包しながら荒々しい野生の呼び声に応える。なかでもソートンとの人間と動物の情感の交感には強い感動を覚える。
 著者は、1876年1月サンフランシスコに生まれる。母はジョン・ロンドンと再婚する。ジョンは、農場労働者で生活は苦しかった。子供のころから家計を助けるために働いた。1896年カナダで金鉱が発見され一攫千金組みにジャックも加わったが壊血病にかかり一年足らずで帰ってくる。
 この貴重な体験がのちに作品の大きな助けとなった。この頃から作品が少しずつ売れるようになる。1916年11月22日、狂気の恐怖に駆られて自殺するまでの十六年間におびただしい作品を発表しているが、優れた作品はその割には少ない。この「野生の呼び声」は、著者27歳の作品で、1903年に出版され当時の人々の熱烈な歓迎を受け発売直後一万部を売りつくしたといわれている。

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