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映画 犯人逮捕の約束を守ろうとする刑事の哀しさ「プレッジ(‘01)」

2006-03-27 13:07:08 | 映画
 家族のない一人の男が定年退職する。送別パーティの最中、ネヴァダ州リノ郊外ベッカー郡で少女の無残な死体が発見される。退職時限まで、あと6時間あるとしてこの事件にかかわるのは、ジェリー・ブラック刑事(ジャック・ニコルソン)。
 ジェリーが事件を少女の両親に告げたとき、母親から犯人を絶対に捕まえるという約束をさせられる。
               
 知能障害者でインディアンのトビー・ジェイ・ワデナ(ベニチオ・デル・トロ)が、目撃証言から逮捕され、自白したあと留置場で警官の銃を奪い自殺する。警察はこれで一件落着と判断する。ジェリーはさらに調査を進め、事件当時別件のレイプ事件で服役中だったワデナは犯人ではないと確信するが、警察は「捜査は終了した」と言って追い払う。ジェリーには約束があった。少女の母親との約束が。

 いすずの4WD車につり用のボートを牽引して事件現場に向かう。これは決して現れない犯人探しの旅の始まりだった。酒におぼれて正体をなくしても生きているのは、約束を果たしたいという執念にとりつかれているからだった。仕事一途の人間がその仕事から引き離されると、生きがいをどこに求めていいのか分からなくなる。組織に忠実で真面目な人間ほどかかりやすいものなのだろう。

 このジェリーも釣りが趣味ではあるが、退職と同時に釣りに費やす時間もたっぷりと受け取り楽しめるはずが、現役時代の充実したものにならない。仕事あっての趣味という図式だ。その生きがいのあまりにも犯人逮捕の執念が強すぎるため、恋人の一人娘をおとりに使う失敗をしでかし、折角の小さな幸せも手からこぼれ落ちてしまう。哀しい人生の最終章だ。

 ショーン・ペンがジャック・ニコルソンで映画を撮りたかったといっていて、ニコルソンの独壇場に終始する。ベニチオ・デル・トロやミッキー・ロークの出番が少ない。贅沢な俳優の使い振りだ。ベニチオ・デル・トロは知能障害の犯人役ですぐ自殺。ミッキー・ロークは行方不明少女の父親役、時間にして2~3分だろうか。それにしても俳優というのはこんな短い時間の出演ながら、娘の話で泣く場面を見事にやってのける。微妙な表情の変化を表現していた。

 微妙な表情といえば、ニコルソンがロリ(ロビン・ライト・ペン)から気持ちを打ち明けられる仕草に応える表情も、言葉でうまく言えないが、なんでもないようで難しいのだろうと思う。ロビン・ライト・ペンがジャック・ニコルソンの手にキスをし、手を伸ばして頬をなぞり首筋に流れ胸に行き、手を自分の乳房のあるシャツの上に持ってくるという一連の動作の間のこと。
                
 風景も気になるもので、わたしは四輪駆動車や田舎道、それに山や湖が出てくると無性にうれしくなる。そういう意味でも楽しめた。

 監督は、ショーン・ペン。気性の激しいところがあって、‘85年マドンナと結婚したころは、警察沙汰や飲酒運転と暴行で6ヶ月の実刑を受けたこともある。’89年離婚。‘90年「ステート・オブ・グレース」で共演したロビン・ライト・ペンと出会ってから、がらりと変わり、脚本、監督業でも一定の評価を得て、俳優としても’03年「ミスティック・リバー}でアカデミー主演男優賞を受賞している。男は意外に奥さん次第なのかも。

 主なキャストは、ジャック・ニコルソン1937年4月ニュージャージ州ネプチューン生まれ。ロビン・ライト・ペン1966年4月テキサス州ダラス生れ。アーロン・エッカート1968年3月カリフォルニア州サンタクララ生れ。この映画では、刑事のスタン・クロラックを演じている。それに出番が少ないミッキー・ローク、ベニチオ・デル・トロ。

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