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ミステリー シルヴィア・マウルターシュ・ウォルシュ「死、ふたたび」

2005-10-16 13:33:31 | 読書
 レベッカ・テンプル医師は、最愛の夫デイヴィッドを糖尿病で亡くしてから、ほぼ一年近くになろうというのにいまだに立ち直れないでいる。デイヴィッドの母セイラも喪失感にさいなまれていたし、セイラの過去もナチス・ドイツによるユダヤ人などへの組織的絶滅計画、いわゆるホロコーストで家族のほとんどが犠牲になり、かろうじて妹が一人生き残ったに過ぎない。そして今回の息子の悲劇が追い討ちをかけていた。

 時代背景は1979年。ポーランドから白血病の娘ナタールカを連れたハリーナが訪れる、ハリーナの元亭主ヤネクとマイクル・オージーンスキ伯爵も追いかけるように訪れる。
 伯爵は、第二次大戦中ハリーナに助けられたという初老の痩身で背が高くハンサム、金ボタンのついた濃紺のブレザーという装い、波打つライトブラウンの髪の毛は、淡い黄色のシャツの襟に軽く触れていて、日焼けした顔、髭をきれいに剃り、高価そうなコロンの香りを漂わせている。ハリーナがセイラを紹介したとき、握手の代わりにセイラの手を口元へ持っていき、そっと唇に押し当てた。優雅な装いと魅入られるような作法の伯爵に、レベッカも強い関心を持つ。

 マイクル・オージーンスキ伯爵の自宅に招待されたレベッカ、セイラ、ナタールカが屋敷に着いたとき、マイクルはプールの底に沈んでいた。事故なのか事件なのか、レベッカの謎解きが始まる。

 生前伯爵から1750年ごろを舞台にした歴史小説を書いる事を聞かされていた。残された原稿を読むことと現実の日常が並行していて、しかも違和感なく読者に届く。実に的確なプロットと繊細な表現は、時間を忘れさせてくれる。最後に犯人が明らかになるまで緊張感は途切れない。ページの最後を閉じたときセイラ、レベッカ、ナタールカの絆が結ばれて、歓喜に満たされる。

 著者はドイツのシュトゥットガルト生まれ、4歳のときカナダへ移住。この作品は二作目で、2003年アメリカ探偵作家クラブ最優秀ペーパーバック賞を受賞している。
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