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映画「闇の列車、光の旅SIN NOMBRE’08」劇場公開2010年6月

2012-12-13 12:42:45 | 映画

                 
 908-555-0187。この電話番号は、サイラ(バウリナ・ガイタン)が父からいやというほど暗記を強要されて憶えたものだ。なぜならアメリカに着いたとき唯一の命綱だったからだ。

 不法移民の群れは、グァテマラからメキシコに入り列車の屋根に乗ってある地点まで行き、リオグランデ川を渡ってアメリカ合衆国に入国する算段である。この中にサイラの父と伯父も含まれている。

 メキシコの格差社会では、大学を出ても高給を望めず勢いアメリカあたりに職を求める。それ以外の若者は貧しさに耐えるかアメリカに不法移民となるか、メキシコでギャングとなるかのどちらかだ。

 リルマゴ(テノッチ・ウェルターメヒア)を首領とするギャング一味の一員にカスペル/ウィリー(エドヴル・フローレス)がいた。ウィリーには組織に内緒のマルタ(ディアナ・ガルシア)という恋人がいた。
 ある日、リルマゴから「身が入ってない。不満も出てる」と言われる。公園の片隅で会合を開いていたとき何気なく近づいてきたマルタに眼をとめたリマルゴは、二人で話があると言って離れて行った。

 あとでウィリーがちゃんと送り届けてくれたのかと聞いたとき「悪魔がさらって行った」と言う返事だった。つまり死んだと言うことだ。リマルゴがレイプをしようとして揉み合いマルタを突き飛ばして石に頭を強打したせいで死亡した。

 このギャングどもは非情にも不法移民の群れにも襲いかかっていく。リマルゴ、ウィリー、スマイリー(クリスティアン・フェレール)の三人がその実行犯だった。ところがリマルゴの悪癖が出た。サイラを見たリマルゴは、俄然欲情してレイプに及んだ。貨車の屋根にもかかわらず。とんでもない男だ。

 マルタを殺されたウィリーは、前後の見境もなく咄嗟に牛刀でリマルゴの喉を掻き切っていた。これで全国の組織から追われる身になったウィリー。サイラは危機を救ってくれたウィリーに仄かな恋心が沸き起こる。
 ウィリーの数々の犯罪行為を聞かされてもサイラの純粋な心に何の陰りも見当たらない。リオグランデ川を渡るためのタイヤにしがみついていた時、追っ手のギャングがウィリーを見つけ、ためらいなく射殺した。

 陽光のまぶしいアメリカの大地、父も恋人も亡くしたサイラは、広大なスーパーマーケットの駐車場の片隅にある電話ボックスから踊るような相手の声を聞いていた。

 どうやらこの監督はリサーチもしたらしいから、こういう話も事実らしい。日本にいると想像もできない現実がある。しかも、なにもできない現実が悲しい。
             
             
             
             

監督
キャリー・ジョージ・フクナガ1977年7月カリフォルニア州オークランド生まれ。

キャスト
エドガル・フローレス ホンジュラス生まれ。
バウリナ・ガイタン1992年2月メキシコ・シティ生まれ。
クリスティアン・フェレール 
テノッチ・ウェルターメヒア 
ディアナ・ガルシア1982年1月メキシコ生まれ。

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