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読書「その裁きは死The sentence is death」アンソニー・ホロヴィッツ著2020年創元推理文庫刊

2023-01-19 14:46:16 | 読書
 二つの謎を追う作家アンソニー・ホロヴィッツ。彼が脚本を書いているテレビドラマ「刑事フォイル」シーズン7の序盤の“場面27戸外“。 1946年に設定された昼の撮影現場に現れたのは、ロンドン警視庁顧問、元刑事のダニエル・ホーソーン。殺人事件の発生を告げると同時にこの事件の顛末を本にしてくれという。気の進まないままホーソーンについて回るホロヴィッツだった。

 殺人事件の被害者は、離婚専門弁護士のリチャード・プライス。事件現場は、ロンドンの北ハムステッド・ヒース、フィッツロイ・パーク。この辺りは高級住宅地といってもいいかもしれない。四方をさまざまな植物に囲まれた場所に足を踏み入れることになる。木々が並び、藪が茂り、バラ、クレマチス、フジ、スイカズラ、そのほかありとあらゆるつる植物が埋め尽くす。建つ家々は隣から距離があり、エリザベス様式やアール・デコ様式など様々。被害者宅は寝室が三つか四つの現代風の建物だった。

 この辺りフィッツロイ・パークは私道のためgoogleマップのストリートヴューがないが、その周辺は樹々が茂っている。しかも女性専用の遊泳池があった。調べてみると「Kenwood Ladie's Bathing Pond」とある。googleマップは面白い発見をさせてくれる。

 ホーソーン、ホロヴィッツに加えカーラ・グランショーロンドン警視庁女性警部が登場する。ホーソーンに言わせればこの警部、まぬけで根性が悪いということになる。確かにホロヴィッツが脅される場面がある。成績を上げたい警部から、ホーソーンの動向を知らせろというわけ。しかも太った腕でホロヴィッツを壁に叩きつけて。この女の根性悪は、部下のダレン・ミルズを使ってホロヴィッツが本を万引きしたように罠をしかけるというもの。ほんと腹がたつ女だ。最後にこの警部が誤認逮捕の不名誉を浴びるという仕返しもあるが。

 事件はよくある意外な人物で解決するが、ホロヴィッツにとってホーソーンという人物の謎はおいそれと判明しない。酒を飲まない、たばこは吸う、同性愛者嫌い、自宅アパートに入れてもらったことがあるが、生活感に乏しい印象なのだ。

 このほかにも何人かユニークな人物が登場する。実在の人物かとネットで調べたほど、人物造形がリアルな日本人女性作家のアキノ・アンノ。小説や俳句集を書いていて、ホロヴィッツもよく分からない作品だという。

 こんな記述がある。「私は子供の頃、学校で俳句のことを教えられた。俳句が世界に知られるようになったのは、17世紀の俳人、松尾芭蕉のおかげだろう。“古池や 蛙飛び込む 水の音“ これは私が暗唱できる数少ない詩の一つだ」

 これを英訳して小泉八雲は、Old pond / Frogs jumped in / Sound of water. ドナルド・キーンはThe ancient pond / A frog leaps in / The sound of the water.」私し的には、小泉八雲がシンプルでいい気がする。

 余談になるが気になる二つを。一つ目、元刑事のホーソーンと作家のホロヴィッツが事件現場や参考人に事情を聞きに行くが、どちらも拳銃の携帯がない。

 さらにアンソニー・ホロヴィッツが脚本を書いているテレビドラマ「ニュー・ブラッド~新米警官の事件ファイル」でも二人の警官は拳銃を携帯しない。なぜこんなことを言うかといえば、外務省のホームページでイギリスの事件発生数が日本の10倍になると書かれているからだ。従って「ニュー・ブラッド」の二人の警官が逃げ回るという笑えない場面がある。ユダヤ系のアンソニー・ホロヴィッツは、なにか思うところがあるのかもしれない。

 二つ目は、ロンドンの渋滞税。本の中で「ロンドンは渋滞税を課し、中心部への車の乗り入れを減らそうとしているが、あまり効果は上がっていない。歩く方が車に乗るより速いくらいだ」

 この渋滞税、私は知らなかった。2003年から導入しているらしい。正式には「Congestion charge、混雑課金」と言うらしいが、ロンドンにある在外公館は、税金とみなし支払いを拒否しているという。この中に日本大使館も含まれる。

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