Wind Socks

気軽に発信します。

人が人を憎む「ヒトラーの忘れもの」2015年12月制作 劇場公開2016年12月

2017-07-24 17:24:06 | 映画

                 
 1945年5月第二次世界大戦終結後のデンマーク。武装解除されたドイツ兵の縦列を逆らうようにジープを走らせていたデンマーク軍のラスムスン軍曹(ローランド・ムーラー)が目を留めたのは、デンマーク国旗を持つ男だった。

 男を呼びとめ「それを持つな」と言うなり顔面を殴打した。何度も打ちつけ止めに入った男も殴り倒した。そして「出て行け、ここは俺の国だ」と叫ぶ。ナチス・ドイツの占領下を経験したラスムスン軍曹の悲痛な叫びだった。

 その憎しみは連合軍の上陸を阻止するため、ナチス・ドイツによって海岸の砂浜に施設された地雷撤去に従事する元ドイツ・少年兵に向けられる。

 セバスチャン(ルイス・ホフマン)を含む14名の少年兵は不安な表情でトラックに乗っていた。戦争が終わったから祖国に帰れると思っていたのがどこかへ連れて行かれるのだ。トラックから降りると早速怒声が飛んできた。「お前達は軍人か? しゃんとして並べ!」ラスムスン軍曹が憎々しげに立っている。

 名前の点呼も「俺の目を見て言え。姓名だ」「声が小さい」あらゆる点でいじめそのものだ。さらに食べ物も十分与えない。食べ物の要求も無視する。少年兵が寝泊りする小屋には脱走防止のため外からかんぬきがかけられる。

 近くに一軒の農家がある。前庭でその家の少女が遊んでいる。母親が飛び出してきて「家に入りなさい」。ドイツ少年兵を警戒しているのか苦々しく思っているのかのどちらかだ。

 ドイツ少年兵は、ラスムスン軍曹の「地雷が全部撤去されればお前達を祖国に帰す」の言葉を信じて黙々と作業を進める。しかし、事故は起こる。悲しい事故ではあるが、その悲しみを少年兵たちと共有するに従い軍曹の心にも変化が現れる。

 かと思うと安全地帯で愛犬が爆死する。すべて撤去したと言う少年兵を信じたのがバカだった。元の意地悪軍曹に戻る。そしてまた事件。今度は、農家の少女が地雷原に入り込み人形と遊んでいた。それを見た母親が半狂乱になって少年兵に助けを求める。

 少年兵全員が集まってきてうちの一人が少女まで安全地帯を作るために地雷を一つずつ探して信管を抜いていく。そして助け出された少女。今まで掘り出した地雷をトラックに積む作業中に大爆発が起こる。駆けつけた軍曹と少年兵4人は、何もない地面を眺めるばかりだった。

 10人の犠牲を払った地雷撤去作業。残る4人を帰国させるために立ち寄った本部のテント。上官のエベ大尉(ミケル・ボー・フォルスゴー)の「この4人の少年兵を別の作業地区に派遣する」という意外な言葉。ラスムスン軍曹は「騙したな」と吐き捨てた。

 4人の少年兵をトラックに乗せドイツとの国境で降ろし「あの森の向こうがドイツだ。さあ行け!」素晴らしいエンディングだった。

 軍曹の人間としての矜持が見て取れ、余計な虚飾はまったくない。農家の少女を助け出したあと作業終了と共に少年兵たちはトラックで去っていくが、農家の母親と少女が手を振って別れを告げる場面もロングショットでハグも「ありがとう」の言葉もない。いやでも気持ちが伝わってくる。

 国境で別れる少年兵たちもハグも「ありがとう」も「元気でな」もない。遠ざかりながらセバスチャンが二度ほど振り返る。それを見送る軍曹。それでも観る者に感動を与えるし、軍曹のこれからやセバスチャンの未来に思いを馳せて余韻が残る。それにしてもこの憎しみの感情をどうコントロールすべきか。近年ますます増大傾向が危惧される。

ちなみに2015年東京国際映画祭でラスムスン軍曹を演じたローランド・ムーラーは、最優秀男優賞を受賞している。
     
監督
マーチン・サントフリート出自不詳

キャスト
ローランド・ムーラー出自不詳。
ミケル・ボー・フォルスゴー1984年5月デンマーク生まれ。
ルイス・ホフマン1997年6月生まれ。

ご面倒ですが、クリック一つで私は幸せになります!

全般ランキング
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする