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クライム・アクションの傑作と言ってもいい2015年制作「ボーダーライン」劇場公開2016年4月

2016-09-16 16:33:23 | 映画

               
 まさに狼の群れに放り込まれた子羊のように翻弄されるFBI女性捜査官。その捜査官は、誘拐事件を主に担当していたケイト・メイサー(エミリー・ブラント)。

 ケイトはチームのリーダーとして実績を上げてきたのを評価され、国防総省のマット・グレイヴァー(ジョシュ・ブローリン)率いるチームの一員に抜擢される。

 このチームは、メキシコの麻薬カルテルの首領マニエル・ディアスを誘拐犯として捜査するのが目的だった。とは言ってもケイトには詳細な説明がなく「われわれを見て学べ」とマットが言うだけだった。

 それでも事態は動いていく。何が起こるかわからない状況ではついて行くしかない。テキサス州エル・パソに移動する国防総省のビジネス・ジェットに乗り込んできたアレハンドロ(ベニチオ・デル・トロ)も謎めいた雰囲気を醸す男だった。ケイトは自己紹介するが、彼は名乗らずに寡黙な時間が過ぎていく。

 メキシコで8番目の大きさ、世界で2番目に危険な町といわれるシウダー・ファレスにアフガニスタン帰りの兵士の護衛つきでシボレーのユーティリティー・ヴィークルに分乗して裁判所へ向かう。

 目的は、麻薬カルテルの首領マニエル・ディアスの弟ギエルモをアメリカに移送してディアスの居所を聞き出すためだった。

 無駄なセリフがなくテンポのいい画面展開で秀逸な音楽と共に観る者は釘付けになる。5台の車がハイスピードで走行するとか、ファレスの街では、麻薬に係わるものの死体を高速道路から吊るして見せしめにしているとか、メキシコの警官には気をつけろ、買収されているものが多いとか、そして道路の渋滞を利用して組織のメンバーがギエルモ奪還に来るという緊張感。アサルトライフルで麻薬組織のメンバーは射殺されるとか。めまぐるしく展開される。この一連の作戦にFBIがたぶらかされ使われていたのを知るケイト。

 徐々にアレハンドロの実像が明らかにされる過程をベニチオ・デル・トロの好演で存在感が増す。最後のシーンまで息を抜くことが出来ない。その最後のシーンですら緊張感が漂う。

 ケイトの部屋を訪れたアレハンドロは、「作戦はすべて法規に準じたもの」だという書類にケイトのサインを求める。

 これは国防総省がアメリカ国内での捜査権がないことからFBIをたらしこんで、しかも法を無視した捜査を正当化するものだった。国防総省に雇われているアレハンドロにも必要なサインだった。

 ケイトは「できない」という。ケイトの拳銃を握り締めたアレハンドロは、ケイトの顎に銃口を当てて「君は自殺することになる」と凄む。

 ケイトはやむなくサインをする。アレハンドロは拳銃を解体してゴミ箱に捨てる。そして「小さな町へ行け、法秩序が今も残る場所へ。君にはここは無理だ。君は狼ではない。ここは狼の地だから」といって去っていく。

 まだ心のコントロールが出来ていないケイトは、拳銃を組み立てて駐車場を歩むアレハンドロをベランダから狙う。気配を感じたアレハンドロは、振り返って見上げる。撃てる筈がないという顔。

 拳銃を握りしめ額に青筋が浮いたケイト、撃つことができない。むやみな殺人はできないのがケイトだ。やっぱり狼の群れにはふさわしくなかった。

 実際の麻薬組織への対応はこのようなのかは分からないが、この映画のようであってもおかいくない。まさに麻薬戦争だから。

 観終わってなぜか清涼感を感じた。サイド・ストーリーに余計なラブロマンスがなかったせいかもしれない。骨太の犯罪映画といえようか。批評家の評価は高く、2016年アカデミー賞の撮影賞、音響編集賞、作曲賞がノミネートされている。
         
         
         

 

 

 

監督
ドゥニ・ヴィルヌーヴ1967年10月カナダ生まれ。

音楽
ヨハン・ヨハンソン1969年9月アイルランド生まれ。本作でアカデミー賞作曲賞にノミネート。

キャスト
エミリー・ブラント1980年2月イギリス、ロンドン生まれ。
ベニチオ・デル・トロ1967年2月プエルトリコ生まれ。2000年「トラフィック」でアカデミー賞助演男優賞受賞。
ジョシュ・ブローリン1968年2月カリフォルニア州ロサンジェルス生まれ。

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