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映画「クロッシングBrooklyn's Finest’09」劇場公開2010年10月

2011-05-16 11:14:12 | 映画

              
 三人の男がそれぞれ別の目的を持って公営住宅団地に向かう。この三人の男ニューヨーク市警の警官でありながら面識はない。

 エディ(リチャード・ギア)は、勤続22年で退職まで7日間ある。この7日間を無事乗り切りたいと思っている。エディは、なるべく事件に係わらないように自分の身の安全第一に今までの警官生活を送ってきた。同僚の親しい警官はいない。心にぽっかりと穴があいたようで、毎朝拳銃を口にくわえて空砲を撃つ。

 サル(イーサン・ホーク)は、ひとけのない道路の片隅に停めた車の中で売人の話を聞いてやる。話が一段落したところで、いきなり発砲してその男を殺す。袋に入った現金を持ち帰る。思ったほどの額ではなかった。
 家には双子を身ごもった妻と二人の子供がいる。妻は喘息を患っていて、原因が家のカビを吸い込んでいるせいだった。新しい家がどうしても必要で、ヤクの売人の手入れのとき、その辺にある現金を持ち帰ったりする。
 新しい家の売買期限が迫る。売人の現ナマを警察に入れても、どうせお偉方のマホガニーの机や部屋のペルシャ絨毯に変わるだけだ。その論理を手入れの時掠め取る現金に理由付けをする。

 タンゴ(ドン・チードル)は、ヤクの密売組織に潜入している捜査官だった。いい加減この仕事に嫌気が差していた。スーツにネクタイとデスク。そんな刑事になりたい。連絡員の警部補ホバーツ(ウィル・パットン)に昇進を進言する。

 ある日、スミス特別捜査官(エレン・バーキン)を伴って現れたホバーツは、キャズと呼ばれるカサノバ・フィリップス(ウェズリー・スナイプス)の逮捕に罠を仕掛けるのを手伝えと言ってきた。このキャズには刑務所で命を助けられた恩義をタンゴは持っていたので断った。

 この三人の男たちが偶然同じ日の同じ時刻、体を張った瞬間が訪れる。エディは、行方不明の女性を載せたバンを追って。しかも、退職後に。
 サルは、作戦中止を聞き目標としていた売人のアジトに金を求めて。タンゴは、キャズを殺した仲間の男を殺すために。

 おびただしい警察車両の回転灯の光の中に立つエディには、行方不明女性発見の喜びは浮かんでいない。彼は人生に疲れていた。その顔に浮かぶのは、周囲の光が明滅していることだけだった。

 この映画には英雄的な警官は一人も出てこない。何かしら人生に追われ疲れ、ずーと眠りたいような雰囲気が伝わってくる。観終わったあと重苦しい気分にさせられるが、人間の醜い性(さが)を見せ付けられているにも拘らず満足感も与えられる。手応えのある映画だった。
            
            
            
            
            
            
            
            
            
            

監督
アントワーン・フークア1966年1月ペンシルヴェニア州ピッツバーグ生まれ。’01「トレーニング・デイ」が印象に残る。この映画で、デンゼル・ワイントンはアカデミー主演男優賞の受賞している。

キャスト
リチャード・ギア1949年8月ペンシルヴェニア州フィラデルフィア生まれ。
イーサン・ホーク1970年11月テキサス州オースティン生まれ。
ドン・チードル1964年11月ミズーリ州カンザスシティ生まれ。
ウェズリー・スナイプス1962年7月フロリダ州オーランド生まれ。
ウィル・パットン1954年6月サウスキャロライナ州チャールストン生まれ。
エレン・バーキン1954年4月ニューヨーク生まれ。
コメント
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