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読書 小林美佳「性犯罪被害にあうということ」

2010-05-01 11:35:34 | 読書

         
 夜帰宅中、道を聞く振りをした男に車に引き込まれてレイプされたOLの告白。その経験から性犯罪被害者自助グループ運営にも携わっている。著者は被害者の苦しみや悩みなどを吐露している。性犯罪取締りの強化がなされているが、不思議に思うことがある。それは、警察の捜査についてである。この本にも書いてあるが、警察にレイプされたと届けた時の対応に医療処置がある。
 この本には、届けて大怪我でないことの確認。写真撮影(正面と横向き)。事情聴取。「なにか入れられた」と答えその何かが分からない。「何を入れられたか分からないじゃ、もしかしたら陰茎かもしれないよね? 病院、行っとこうか」と女性刑事。警察の車で都立病院へ行く。
 産婦人科の医師「もう時間が経っているから……一応消毒しておくけど、これで避妊できるわけでないから」
「いやならやめとおく?」
「とりあえずの消毒だからね」と言う。こういう文脈なら、転んですりむいた手当てのようだ。重大な犯罪の被害者と言う意識が全くない。
 警察の事情聴取もいいけれど、素早い証拠物の収集と言う視点に立てば専門の担当者が着衣や体に付着したものの収集が先だと思う。病院なんて捜査の専門知識など皆無のはずだ。 これでは犯人検挙なんて偶然捕まったヤツの自白しかない気がする。殺人事件なら刑事や鑑識がやってくるのに。
 この妊娠云々については、著者が最近の事情を書いている。「私があの時、警察で本当のことを話さなかったのがいけなかった。現在(この本が発刊されたのが、2008年5月なのでおそらく2007年ごろだと推測される)は、レイプケアキットや、性犯罪対処マニュアルに加え、アフターピルなどもあり、性交後72時間以内であれば、妊娠を防ぐことができる。とある。
 確かに近頃の性犯罪増加に警察は対応を迫られて進んできたことも確かだ。インターネットで調べると警察の広報で、性犯罪についての説明が詳しく書かれている。それでも病院へ行くことには変わらないようだ。警察内部で素早くできないものだろうか。
 おそらくややこしい法律で、生きている人間の医療行為は出来ない仕組みかもしれない。そうならその法律を変えればいい。性犯罪被害者に限ってと言うことで。それでもダメか? とにかく法律論や縄張り論、ご都合主義、無気力が考えられないほどの非常識を生んでいるのかもしれない。この捜査過程を見ると忸怩(じくじ)たる思いにとらわれる。
コメント (1)
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