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映画 ‘07「ノーカントリー NO COUNTRY FOR OLD MEN」

2008-10-18 10:15:01 | 映画

          
 アカデミー賞受賞作品。Allcinema ONLINEのコメントを見ても殆んどが絶賛している。専門的な映画批評家然としたものや素直に緊迫感とバビエル・バルデム扮する異様な殺し屋の存在感に圧倒されたようだ。
 ルウェリン・モス(ジョシュ・ブローリン)は、テキサスの砂漠地帯の荒野で麻薬取引がもつれた銃撃戦跡で、黒いカバンに入っていた200万ドルの現ナマを見つける。人間誰しも現ナマの魅力には勝てそうもない。周囲は吹き抜ける風と何も見えない死体だけだ。ただこの麻薬がらみの金だけは相当ヤバイ筈だ。
          
          ジョシュ・ブローリン
 トレーラーハウスに持ち帰っても落ち着かない。しかもモスは、この金に送信機が仕込んであるのを知らなかった。
 疫病神ともいえる殺し屋アントン・シガー(ハビエル・バルデム)が迫る。一方エド・トム・ベル保安官(トミー・リー・ジョーンズ)も探し始める。
 で、この殺し屋シガーはスキューバ・ダイビングに使うようなボンベを持ち歩いている。この圧縮空気でドアの錠前や人間の額を撃ちぬくのに使う。もちろんでかい消音器つきのライフルも愛用品だ。映画の中で8人は殺し続ける。異様なヘアスタイルとメイキャップで観客の度肝を抜く。これはコーエン兄弟のアイデアなのだろう。
          
          ハビエル・バルデム
 殺し屋になったハビエル・バルデムの演技力を評価する人もいるが、俳優ならこの程度のことは当然のことだ。映画自体は、極力音を排してあって、砂漠の場面なんかも風の音と歩く音だけで、テキサスの真昼の暑さが感じられる。
 それに余計な説明的なシーンも少なく、緊張感の持続に成功している。だからシガーが荒野にぽつんとあるガソリン・スタンドの親父との奇妙な会話の途中で、カウンターに丸めた包装紙がビリビリと伸びてくる場面にも緊張感が漂うという具合だ。
 これは殺し屋の映画ではない。老保安官エド・トムの苦渋の物語だ。オープニングでエド・トム保安官のナレーションが入るが、その中で14歳の少女を殺した少年が“感情はない。以前から誰か人を殺そうと思っていたと言った。最近の犯罪は理解できない”これはエド・トムばかりでなく、現代に生きる人々の共通の思いだろう。
          
          トミー・リー・ジョーンズ
 日本でも「誰でもいいから人を殺したかった」という事件が相次いでいる。なにが原因なのだろうか。精神分析医や社会心理学者の分析もあるが、本当のところはわからない。いずれにしても異常性と“敬語を使わなくなってから変わった”とエド・トムが言う時代の流れを鮮やかに浮き彫りにした。

 監督 ジョエル・コーエン(兄)1954年11月生まれ。イーサン・コーエン(弟)1957年9月生まれ。ミネソタ州ミネアポリス出身。1965年「ファーゴ」でアカデミー脚本賞を受賞。ジョエルの妻は、フランシス・マクドーマンド
 キャスト トミー・リー・ジョーンズ1946年9月テキサス生まれ。‘90「逃亡者」でアカデミー助演男優賞受賞。
 ハビエル・バルデム1969年3月スペイン生まれ。本作で’07アカデミー助演男優賞受賞。
 ジョシュ・ブローリン1968年2月ロサンゼルス生まれ。妻はダイアン・レイン。 ウディ・ハレルソン1961年7月テキサス州ミッドランド生まれ。‘96「ラリーフリント」でアカデミー主演賞にノミネート。
 ケリー・マクドナルド1976年2月スコットランド生まれ。
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