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ジェイムズ・クラムリーのハードボイルド「ファイナル・カントリー」

2005-07-29 14:26:36 | 読書
 60歳になる私立探偵ミロ・ミロドラゴヴィッチ。年の割にはタフで酒も強くセックスにも強い。女二人を相手に三人プレイまで演じる。コカインなんかも適度に吸引しながら銃撃や殴り合いにもひるまない。テキサス州の私立探偵免許を取り、人探しから犬探しまでこなす。

 こんな仕事ばかりでは報酬も知れたもの。「私は数年前に、盗まれた父親の遺産を取り戻し、おまけに国外の銀行に隠されていた“洗浄されていない”麻薬の資金をかなり多額に入手した。生まれて初めて手にした本物のカネだった。しかも相当の額だ」という記述があって、カネには困らないというわけだ。

 今回も、何よりの楽しみは玉突きの賭けという家出をした若妻を探すため酒場に向かう。若妻にたどり着いたと思えばまた別の人物を探す羽目になってしまう。鼻から息を吸い込むと、冬の冷気が頭蓋骨まで達してチリチリと痛む季節というのに、男たちは血みどろの殴り合いや肉を焼き粉々にぶちまける銃撃にわれを忘れているようだ。複雑な入り組みを経て物語は収まる。一度読んだだけでは分かりづらいが、アメリカン・ミステリー独特のひねったユーモアや風景描写の余情も書き込まれていて楽しめる作品になっている。

 導入部の一部に“私の故郷モンタナにはすでに厳しい秋が訪れているに違いない。メリウェザー・ヴァリーを取り囲む峰々の頂や高い尾根は厚い雪でおおわれ、コトンウッドの枝は骸骨の指のように葉が落ち、黒ずんだ松の木立の中でカラマツの葉が黄金色に染まり、氷結が岸をくっきりときわだたせる渓流沿いにヤナギが色づいているだろう”とある。

 2002年度の英国推理作家協会賞シルバー・ダガー賞を受賞している。
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