自分にとって区切りの日ならばと、時間があるのをいいことに僕は早朝6時から意気込んでホテルから山へ、次の山へと早歩きに巡礼よろしく参拝行して、Sさんには出向いた先で昼に車で拾ってもらうことにした。
誤算だったのは、14時ごろからと予報されていた雨が11時前には降り始め、強まっていったこと。
傘を持っていなかったので、足止めされた神社で雨宿りし、その後の散歩を諦め、迎えの場所を変更してもらってSさんを待った。
僕はSさんのご主人が奉納した社の写真は鮮明に覚えていて、それがB神社の本体だと思っていたのだが、それは勘違いで、奉納先は摂社だった。
そんなわけで、鳥居の前に立ったとき、神社の立派さ、のぼりが多数立つ祭りの規模にたまげていた。
長い参道の両脇に設営された出店は、弱まる気配のない雨で少し寂しいことになっていた。
足元はぬかるんでいて、白いパンツ姿のSさんは後悔している。
この雨のせいで、今日の本宮祭りは本来より短縮、縮小されて進行するという。
コロナウイルスのせいで3年ぶり開催となった祭りを楽しみにしていた方々には残念だが、それでも境内の熱中がどよめいて伝わってくる。
氏子は4つの地域に分けられ、それぞれが山車を持つのだそうだ。
社殿に順番に山車ごと入り、神事が行われる。
Sさんの地域が筆頭で、ちょうど拝殿の中に入っている。
大太鼓が轟き、掛け声が響く。
出てきた山車が勇猛に揺らされる。
Sさんのご主人がやってきた。
祭りに参加する他の面々と同じく鉢巻に褌姿である。
山車を引回す男たちは若い連中だが、氏子の男性は年配の方まで一様にその姿で気合を見せている。
次の組がやってきて、拝殿に入っていく。
違う色の鉢巻に飾りもので、組の違いが一目でわかる。
地域ごとに拝殿で受ける神事は違ったのだろうか。
定かではないが、手順は少し異なっているように思えた。
拝殿から出ると、山車は最初の組とは別の場所に控える。
順調に次の組へ。
拝殿は、本殿に向けて真ん中に幅2メートルほどの通路があり、両側は膝上ほどに段が高くなっている。
通路で行われている神事を、一段高い両脇から観客が見守っている。
うろうろと拝殿の横に歩いてみたが、屋根がある拝殿スペースはいっぱいで、人が入る余地はあまり残っていない。
情景を見ながら、僕がここにいる理由はなんなのだろう、とわざわざ呼ばれたことを思い出したが何も思い当たらない。
神社全体の様子をぶらぶら眺めて、Sさんたちのいるところに戻った。
最終組が入ってきた。
山車が拝殿に同じように進み、準備を始めた。
時間が経過するが、拝殿はひっそりしていてこれまでと様子が違う。
少し妙だ。
「遅いですね」
と言ったか言わないか記憶は曖昧だが、そのぐらいの時間は経った。
と、柱に据え付けられたスピーカーから
「医療関係者の方、いらっしゃいましたら至急拝殿までお越しください。」
と異変を告げるアナウンスが流れた。