宮之浦から西へ。
前を走る軽トラは全くのマイペースで、ごくゆっくりと走っていたかと思うと何もない場所で急停車したり、そんな車が何台もあるのですが、自分たちの体内にも島の時間が流れ始めたのか、同乗する全員がそれを大らかにみています。
ただ、そんな状況なので交通量の割には案外事故は多く、夕方には直線の道路で脱輪している自動車も見かけました。
左側は濃い緑色の山々、右は急峻に切り立った崖が、息を飲むほど青い海に落ち込んでいます。
ウミガメの産卵地でもある、永田浜に向かいます。
屋久島に行くように伝えてきた場所が草津温泉と箱根という、火山のエネルギーが活発な場所だったので、今回の屋久島行きもすぐ隣の口永良部島の噴火が連想され、島を見ながら祈りたいという思いをもちました。
永田浜からなら口永良部島はバッチリ見えるだろうという情報でした。
静かな海でした。
岸からすぐに深くなるのが屋久島の海だと聞いており、波があるようなら気をつけてと言われていましたが、この日の海は沖まで優しいエネルギーで満たされていました。
しかし、こんな晴天なのにガスのせいで残念ながら口永良部島は見えません。
時間を充分にとっていたので、一時間ほど海につかり、魚を追い、贅沢な時間を過ごしました。
突端まで行けば口永良部島も見えるかもしれない、と岬まで車を走らせました。
島からの距離は永田浜からとさほど変わらないながら、一番近い場所までは行っておきたいと、灯台の裏側にまわって眺めます。
茫洋とした海の、空との境界もはっきりしない中にうっすらと島が浮かんでいました。
かすんでいる大きな島は直線距離では15キロもないのに遠いままで、土地の息遣いまでは感じられず、人がいなくなった寂しさが迫ってきます。
『ここは明け渡すから。
435。
相似形をとる。
エネルギーは従順なかたちで出た。
吉である。
間もなく端境期。』
地球の営みとしては『吉』であっても、ここに暮らす方々の苦痛ははかりしれません。
『人が住む島』
として認められているところです。
無事の生活再開をお祈りしています。