人は地球上で様々な分岐点を通り、現在の位置にたどり着いた。
今年の春、ここに至るまでのメジャーな転換点として、「シュメール」と「イエス・キリストの誕生」の二つを挙げてきていた。
転換点というか、これらが現在の世の中を生み出す元となったという捉え方をしなければいけないポイントだ。
『神の恒久の変化』を伝えてきている以上、必要な修正がこれから行われていくことだろう。
シュメールについては兆しがある。
シュメールを起源とする神は日本にもきているが、存在のあり方が見直されていく可能性を感じている。
現在それよりも大きな動きがあるのはイエス・キリストとキリスト教についてである。
イエスという一人の人間が、「キリスト」になったのはどういう現象だったのかを考えさせられている。
メッセージでは「ダマスクス」にポイントがあったことを伝えてきた。
となると理解しやすくなる。
イエスはユダヤ教への正しい信仰を取り戻そうと活動したが十字架に架けられ、その後を継いだイエスの弟ヤコブ率いるエルサレム教会は、属州エルサレムを支配するローマとのバランスを保ちつつ改めてユダヤ教の信仰を進めていた。
そこにパウロが登場する。
現在のキリスト教の礎を築いた”異邦人の使徒”パウロは、生前のイエスには接触していない。
パウロは元々ファリサイ派の律法学者で、キリスト教に対しては非常に敵対的であり、キリスト教迫害の先頭にあった。
それがダマスクスのキリスト教徒の弾圧に向かうところで光を受け、突如キリスト教徒に変身してしまうのだ。
変身後のパウロの主張は「救いは自分の行いによるのではなく、キリストにおける罪の贖いへの信仰による」とするものであり、ユダヤ教の根幹であった、救いの条件としての律法の意義を否定した。
バリバリの律法主義者だったパウロは、キリスト教への回心とともにガラリと考え方が変わったのである。
パウロは生前のイエスに接していないばかりでなく、歴史上の存在としてのイエスには関心がなかったようで、イエスについて使徒からも彼を知っていたかもしれない他の誰からも教えてもらっていない。
パウロの体験は宗教的真実と言えるのだろうが、彼は当時のイエスについて書かれたものを何一つ根拠にせず、新たなイエス像を創り出し、今までになかった教義を出発させた。
パウロの主張は前衛的でエルサレム教会の存続を危うくするものであり、ヤコブら元々のイエスの教えを保とうとする者との対立を余儀なくされるものであったが、パウロの広める教義は時代背景を援護にメジャーになっていく。
初期のキリスト教徒とユダヤ教徒の記録資料によると、イエスの弟ヤコブはペトロや「十二使徒」の残りのメンバーやヨハネ、パウロよりも上位の初代キリスト教徒共同体の長として認められている。
そのヤコブは新約聖書からほぼ完全に削除されてしまい、初期教会で彼の果たした役割が、現代のほとんどのキリスト教徒の脳裏にあるようなペトロやパウロに置き換えられてしまったのである。
3世紀から4世紀になって、キリスト教が次第に多くの宗派や分派を持つユダヤ人の運動から、組織化され正当性を厳しく重んじるローマ帝国の宗教へと形を変えてゆくにつれ、イエスの弟であるというヤコブの身分は、彼の母マリアが永遠の処女であると主張する人々にとって障害になった。
こうしてヤコブの影響力が低下するにつれて、ペトロのそれは高まっていった。
ローマの初代司教としてのペトロの役割と、一番弟子としての彼の地位により、ペトロはローマの教会権威の基盤として理想的な人物になったのである。
パウロの確立した教義は主流派になり、彼の書簡はキリスト教の正典として新約聖書に加えられることになった。
イエスの復活についての最古の証言は、パウロの書簡にあるものである。
四つの福音書にはそれぞれの書記のカラーが出ているが、これらは後世に複製されていく過程で多くの改竄が行われている。
それは悪意によるものではないし、関わった人間が自分の思想を書き加えたわけでもない。
人力で書き写していた時代が一千年以上も続くのだから、書き間違いもあれば、他の箇所との矛盾を解消すべく語句を変えたケースもあるようだ。
福音書自体が書記の創作を含むものであるから、現存する福音書がイエスの言説を正しく伝えているかというとさらに怪しいことになってくる。
これらも宗教的真実とは言えても、果たして人間イエスはどう生きたのかという事実は、完全な形ではそこには存在しない。
僕が感じているイエスの実像は、
『大衆扇動運動』
である。
もちろん、彼がユダヤ人の救済や神の王国の到来を説いたことには何の疑いもない。
イエスが多くの奇跡を行なってみせたことは事実として客観的な文献に残っている。
参考文献(一部引用)
「イエスという男」 田川建三 作品社
「イエス・キリストは実在したのか?」 レザー・アスラン 文春文庫
「捏造された聖書」 バート・D・アーマン 柏書房