Fish On The Boat

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『カラスの常識』

2019-02-18 18:44:33 | 読書。
読書。
『カラスの常識』 柴田佳秀
を読んだ。

身近な野生動物であるカラスの生態・習性、頭の良さについてや、
人間とのあいだで問題になっている、
たとえばゴミを荒す問題や、
人間を攻撃する問題などや、
人間からのカラスへの対応の仕方、
また、どう付き合っていくべきなのか、
までを読みやすく論じた本です。

僕も学生時代になんですが、
カラスに後ろから頭を蹴られたことがあるんですよ。
それも、繁殖期の初夏ならありそうですけど、真冬で、
それも、バイトの屋外勤務の初日、という、
たぶん誰かと間違って蹴ったろ、と思えるような事件でした。
けっこうな首への衝撃でしたよ。
転びかけましたし。
頭はヘルメットを被っていたので怪我はなかったですが、
カラスのほうで、
「こいつ、ヘルメットだし」と
あまり手加減をしなかったのかもしれない。
もうね、痛いとか驚いたよりも、
恥ずかしい。
それに尽きるもんです。

さて、日本には大きく分けて二種類のカラスが棲み分けている。
森の中で暮らすハシブトガラスと、
農耕地や河川敷などひらけた土地で暮らすハシボソガラス。
ちなみに、都会に多いのはハシブトガラスだそうです。
都市はコンクリート・ジャングルって呼ばれもするくらいで、
森みたいなものなんでしょう。
また、海外には白黒のカラスも珍しくないようです。
中に絵が載っていますが、カラスとしての印象は全然違いました。

カラスはスカベンジャーとも言われる種類の鳥です。
スカベンジャーとは、ゴミや死体などを食物として、
自然界の掃除役を担う動物を表わす言葉なんだそうです。
それが、たとえば東京に大集中して、ゴミをあらし、
人生を謳歌して、どんどん増えていきもしました。
著者は、それは、ルールを守らない人間によってカラスを招き入れたのだ、
というように分析しています。
ゴミの日を守らない、ゴミをきちんとした体裁で出さない、
カラス対策にネットをかけるのも怠る、
などによって、カラスはとても生きやすかったわけです。
そんなことをしながらも、行政の方ではカラスを捕獲し、
全国では年に40万羽ほど殺処分しているそうです。

学校にカラスの巣ができて、
親ガラスが児童を攻撃するから駆除しようとなると、
その児童たちの意見として、
「人間の邪魔をするのだから、殺されて当たり前」
というものが飛び出したりもするのだとか。
カラスが増えたのは人間の暮らしかたによるもので、
そして、減らそうと捕獲し処分するのは人間の都合。
そして、そんなあり様を見たり感じたりしながら、
子どもたちのこころは荒んでいく、と著者は危惧します。
そのあり様を作っている大人たちも、
こころは荒んでいて、それを気にも留めていないのかもしれない。

そんなこんななんですが、
まだわかっていないところは、
はっきりと「わからない」と述べられ、
そういうところが続くと、
この本、大丈夫かな、なんて思いもしましたが、
読み終えたトータルの感じ、
それも最終章での論考が真っ当ですばらしかったので、
なかなかおもしろかった、と言えます。
雑学としても、
考えるタネとしても十分に役立ってくれる本だと思います。


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