Fish On The Boat

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『何者』

2019-02-17 01:22:07 | 読書。
読書。
『何者』 朝井リョウ
を読んだ。

歴代二番目の若さで直木賞を受賞された朝井リョウさんの受賞作品です。

大学生の就活の話ですけれども、
このくらいの年齢の人たちって、まだまだ経験も思索も足りないのに、
いっぱしの大人でなければいけない、もしくは大人なんだ、
という意識のためなのか、小さくまとまってしまう人って多い。
というか、大部分の人たちってそうじゃないだろうか、
そして、今30歳、40歳、50歳を超えた人たちも、
かつてはそうだったのではないだろうか。

僕はアラフォーですけども、
若いころを振り返って、
今もバカだけど、当時もバカだったなあ、
教えてやりたい、叱ってやりたい、
と思うときの理由はこれだったりする。

まるでいろいろとなんでも知っている気になって。
ちょっとした物事はなんでも見通せると過信して。
年上の「大人の先輩」たちとも、
自分たちはもう同じ高さで肩を並べたんだというような気で。
あるいは、自分たちが一番優れた判断ができると思いあがりもして。

それは、ひとつの若さだ。
カッコ悪いし、
カッコ悪いと指摘されたり、
カッコ悪さを馬鹿にされている、
笑われていると感じたら、激怒して、
逆に攻め立て、攻撃してしまう若さだ。

そうでもしなければ、立っていられない。
そういう折れやすさだって、若さのひとつの特徴だ。

まあ、いろいろ含まれた作品でした。
社会に迎合するってわけじゃないけれど、
いまの社会体制を肯定というか、受け入れる態度が前提でもあり、
かといって、重要な気づきを与えるキャラクターが、
そうではない考えをもっていたり。

主人公の目を通してマジョリティーの世界を見ているような気がしてくる。
それで終わってしまったら、僕はこの作品を批判したかもしれないけれど、
そうではなかったです。

作者は性格が悪いなあ、と思う。
作家なんてものはそうなんだろう、とも思う。
でも、この、主人公の気持ちの悪い部分を、
自分では内に持たずに書いているわけではないと思いました。
この物語は、一種の自己批判もこめられているのでは、と。
そして、ほんとうの成人を迎えるための階段をひとつ、
踏みだすための物語のようでもあります。
20歳で成人して、お酒もたばこも飲めるようになって、
表面上の振る舞いは成人だし、いっぱしの知識も知恵もつくのだけれど、
やっぱり精神面の成長が追いついていない
(なんていうとありきたりでしょうか)。
そこのところがうまく生々しく描けているところが
この作家の特徴のひとつだと思いました。

本作を読んでいて、何者、というキーワードで語られることで、
そして、匿名のツイッターがカギになっていることで、
僕自身のハンドルネームについて頭が向きもしました。
まあ、こんな話は誰も興味がないでしょうけども、
僕の、ますく555(mask555)というハンドルは、
この物語のような、何者かになるための仮面ではないんですね。
なんてことのない由来ですが、
ドラマにもなった『ガラスの仮面』で、
主人公の北島マヤが、千ものガラスの仮面をかぶる、と
その演技力の幅広さを評されるのですけども、
それにあやかってるんですよね。
いや、俳優になろうなんて考えたことは一ミリもないです、
当時は音楽をよく作っていたので、
いろいろな幅広い種類の音楽を作れるようになりたいために、
1000のガラスの仮面よろしく、
でもちょっと遠慮がちに、1000を555にして、
そして仮面をかぶろうという意味合いで、mask555に決めたんですよね。
ちなみに、13歳頃から本格的に聴きだしたYMOに、
「Behind The mask」という有名な曲があり、
それが好きだったから、なんかいいなとも思っていましたね。
……というわけで、すんません、どうでもいい話でしょ……、終わります。


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