Fish On The Boat

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『Carver's Dozen レイモンド・カーヴァー傑作選』

2016-04-08 21:02:39 | 読書。
読書。
『Carver's Dozen レイモンド・カーヴァー傑作選』 レイモンド・カーヴァー 村上春樹 編・訳
を読んだ。

村上春樹さんによる、
アメリカの小説家、レイモンド・カーヴァーの傑作選。

初期のものから死の間際に書かれたものまで。
マスターピースとされるものから、編者の村上さんの好みによるものまで。
全13作品収録。

初期のころのふたつは、
読んでいて、
なんだろ、なんだかよく出来ていないような気がするな・・・、
なんて思うくらいに違和感のある、しっくりこない小説だったのですが、
三つ目の「あなたお医者さま?」からおもしろくなり、
続く「収集」ではもう夢中になって楽しんでいました。
それからは作品の完成度の高いのばかりが続く感じで(偏見もあると思いますが)、
ずっとおもしろがりながら、そして、最後のほうになると
村上春樹さんの訳文のためなのかわかりませんが、
なんとなくずっしりとして疲れてきました。
そんな体力の(頭脳的体力でしょうか)の限界とともに
ちょうど終えた読書でした。

さっきも書きましたが、「収集」がおもしろかったし、
「大聖堂(カセドラル)」も好きでしたね。
その他の作品でも、
夫婦間の馴れたかんじの性的な目線とか行為に、
とくにその心理に身体性みたいなのが宿っているようにうかがえて
新鮮に感じました。
なんていうか、アメリカだなあという感覚はありながら、
中年くらいの夫婦間の性の、
あっけらかんとしたところが書かれているんです。
そういうところに、はっとして、
そうだよなあ、仲がよくて長年連れ添うとそうかな、
という気もしましたし、
それでいて、やはり文化の違いかという気もしました。

「ぼくが電話をかけている場所」に出てくるロキシーという女性なんて、
現実にぼくの生活にも出てこいと思うような、
ぼくにとっても素敵な女性でした。
そういう、レイモンド・カーヴァーならではの
女性登場人物のキャラクターが印象的でした。
ぼくのイメージや見方の枠組がひろがったような気がする。
でも、そんな広がったイメージが現実の日本の女性とフィットするかは
また別の問題なのでしょうね。

アカデミー賞作品賞をとった
『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』
では、マイケル・キートン演じる主人公が
レイモンド・カーヴァーの作品「愛について語るときに我々の語ること」
を演劇にして演じてました。
この作品は本書には収録されていませんが、
レイモンド・カーヴァーの作品は風化せずに生きているのだなと
この映画で感じましたね。
なにせ、この本を買ったのは、
昨年『バードマン』を観たときよりも前でしたから。
なかなか読まない本は、3年4年と積まれたままです・・・。

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