今日は、この街にいます。

昨日の街は、懐かしい記憶になった。そして・・

796 コペンハーゲン③(デンマーク)

2017-11-14 07:00:00 | 海外
我が家の狭いリビングに鎮座しているのは、デンマーク家具の机だ。池袋の西武で見かけ、そのシンプルさが気に入って購入してもう20年ほどになる。デンマーク・デザインはどこか私の肌に合うようで、買ってからよく見るとCOPENHAGENと刻印されていたりする。北欧の人たちは、寒くて暗い冬を快適に乗り切ろうとインテリアに凝る、そのことがデザインを育てる、といった解説を耳にする。よく出来た話だが私は違うと思う。



人間が抱く「自分の身の回りを快適にしたい」という欲求は、本能以外の何物でもない。寒くなくとも暗くなくても、その欲求は変わらない。ただ何が「快適」であるかは個人によって異なるのが曲者だ。そうした「わがままな感覚」に対し、なるほどと納得させる新たな暮らしの有り様を提案するのがデザインなのだ。だから地理的条件が作用しているのではなく、北欧は単に、提案力のある才能が豊かに存する、ということなのだと思う。



コペンハーゲンを訪れる人の多くが人魚姫に会いに行くようだが、私たちはまっすぐデザイン博物館を目指す。あらゆる分野のデンマーク・デザインの名品が、びっしり展示されている。「ああ、これもか」と思う、日本でもおなじみの産品も多い。椅子のコレクションはもちろんだが、特に興味を惹かれたのは自転車だ。オランダ同様、デンマークの人々も自転車が不可欠の生活道具らしい。だから乗ってみたくなるデザインがたくさんある。

(デンマーク・デザインのジャー。右がStelton社製、左がNormann社製)

今回の旅行で買おうと決めているStelton社製のジャーは、すでに殿堂入りして飾られている。東京の古道具屋で、形の面白さから衝動買いしたNormann社製のジャーは、見当たらない。こちらも有名メーカーなのだが、余りに実用性に欠けるから収蔵品から外されたのかもしれない。「日本に学ぶ」展が開催中で、椅子や照明具など、日本の工芸品が出展されている。デンマークの名品に囲まれても、ひときわ光彩を放っていることが誇らしい。



かつての王立病院だったという博物館を、行ったり来たりしながら気がついたことがある。訪れている人々の肌の色が、実に様々だということだ。特にアジアの若い女性が多いように思う。陶磁器に限ってみても、東アジアは本場だし、タイやベトナムなど東南アジアの国々にも古くからの産地がある。歴史では負けないが、北欧にリードされているのはデザインである。アジアの若者たちがここから学び、故国の産地を発展させてほしい。



リードしているとはいえ、北欧も努力は怠らない。博物館のあちらこちらで、デザイン専攻の学生たちだろうか、思い思いに選んだ名品をスケッチし、そのフォルムの秘密を掴み取ろうとしている。コペンハーゲン市内では、あちらこちらで「門と海」をあしらったマークを見かける。市章にも採用されている伝統のデザインらしい。それをデザイン化して市のマークにしているあたり、やはりこの国の人々はデザイン上手なのだと感心する。



私が机を購入したころ、そのデパートに「イルムス」というショップがオープンした。家具や生活雑貨、文具などが並べられ、それらのデザインの快適さに目を奪われたものだった。今回コペンハーゲンで、中心部の歩行者天国・ストロイエ通りのデパートに入り、商品レイアウトのセンスが実にいいと感心した。そしてエントランスに「ILLUM」のロゴが掲げられていることに気がついた。20年ぶりに快適さの謎を理解した。(2017.10.3-6)











(デンマーク・デザインの我が家のデスク。椅子はフィンランド)







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