「奥の細道」をたどっているつもりは無いのだけれど、山寺に始まった旅の2日目は象潟を目指している。それにしても芭蕉は健脚で、山寺へは尾花沢から、象潟には酒田から、それぞれ「一見すべきよし」と聞いて出向いている。もちろん私たちのように車に乗って楽々というわけではない。おそらく「生涯一度の好機」と覚悟を決めて回り道をしたのだろう。そうした思いで見る景色は格別に違いなく、現代人が失ってしまった視線だ。 . . . 本文を読む
蝉の季節はとっくに過ぎたが、山寺・立石寺は静かであった。それでも観光客がそぞろ歩いているし、土産物店が暇を持て余しながらも並んでいるから、芭蕉のころのように「佳景寂寞として心すみ行く」というほどではないけれど、まずは清閑である。そこで一句ひねろうかと心を鎮めた所に、猛烈な轟音を響かせて列車が鉄橋を渡って来た。JR仙山線である。文学的環境破壊も甚だしいが、静かに渡れと言われても運転士は困るであろう。 . . . 本文を読む
各地それぞれに伝統と趣向を凝らした盆踊りは多いけれど、越中・八尾と秋田・西馬音内(にしもない)のそれだけは、いつかは見に行きたいと願っていた。八尾「風の盆」は2年前に念願を果たしたのだが、毎年8月16日から踊り明かされる西馬音内は、いまだ機会に恵まれていない。だが鳥海山を秋田県側から望もうという今回の旅は、そのコースが西馬音内付近を通過する。時期外れではあるけれど、せめて盆の残像だけでも・・・。 . . . 本文を読む