goo blog サービス終了のお知らせ 

万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

天使が悪魔になるとき

2007年12月19日 18時37分36秒 | 日本政治
孤立深める日本 「死刑停止」の国連決議で(朝日新聞) - goo ニュース

 死刑廃止運動は、特にEUを中心にヨーロッパ諸国で活発であり、その広がりは、遂に国連にまで達したようです。ヨーロッパの人々の死刑廃止への熱意は、恐らく、合理性ではなく、キリスト教精神に内在する”許し”から発しているのでしょうが、それが、全世界の人々に受け入れるようになるまでには、まだまだ長い時間がかかりましょうし、あるいは、拒絶される場合もあるのではないか、と思うのです。

 何故ならば、如何に完璧なる理想を現し、また、如何に善意に満ちた行為であっても、それは、その行為の行われる状況によって、悪い結果を生むことがあるからです。死刑の廃止は、もちろん、人命の尊重と崇高な許しの精神からしますと、これ程、人類の寛容と進歩を示すものはないように見えます。しかしながら、その一方で、人命が軽視され、残酷さが根強くはびこっているような社会では、死刑の廃止は、さらなる犠牲者を生みだすかもしれないのです(本当は、ほとんどの国が、死刑を廃止できるほど、全ての国民が健全で成熟しているわけではない・・・)。利己的な動機から無慈悲に相手の命を奪っても、自分の命だけは助かるのですから。死刑による死への恐怖が犯罪を思い止まらせる、ということは、大いにあり得ることなのです。

 天使が、舞い降りる先を間違えますと、悪魔の役割を演じてしまうことになるとは、何と悲しい現実でしょうか。 
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする