万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

国民を怠け者にする民主党

2007年12月25日 20時20分14秒 | 日本政治
高校授業無償化へ民主が法案、通常国会提出へ(読売新聞) - goo ニュース

 学力低下の現実に直面して、ようやく”ゆとり教育”の見直しが始まりましたが、民主党が通常国会への提出を予定しているこの”高校授業無償化法案”もまた、形を変えて、国民の教育と精神性を蝕む一因となるのではないか、と危惧しています。

 その理由は、第1に、法律によって義務教育とされているのは、小中学校のみであり、高等教育は、国民の自発的な選択によるものであるからです。言い換えますと、進学は国民の学ぶ自由に含まれるのであって、政府が、希望者全てに入学を保障する理由はないと思うのです。政府は、学ぶ意志がありながら、経済的な事情で高等学校へ進学できない人々に支援の手を差し伸べるべきなのではないでしょうか。むしろ、誰でも入学できるという状態は、学生の将来に対する目的意識を失わせることになります。
 第2に、希望者全員の入学は、”競争しない”、という行き過ぎた平等教育の弊害を再発させることになります。中学校で勉強しなくても自動的に進学できることになりますので、入試に向けたモチベーションが低下してしまうのです。これでは、”競争しない”どころか、さらに進んで”何もしない”という状況になるかもしれません。
 第3に、現在、誰もが高等学校に進みますが、本当のことろは、それぞれが、自らの個性を生かした職業選択があっても良いとも考えられます(早期から専門的な技術を取得するほうがよい場合もある・・・)。高校進学を標準に据えた政策は、それ以外の選択をした人々を軽視することにもなります(同年代でありながら、職業人を選択した側が学生となった側を支えることになる・・・)。

 以上の点から、民主党の案は、教育のレベルを低下させ、合わせて、国民意識を怠惰に誘うのではないか、と心配するのです。変化の激しい時代にあって、本当に必要となる人材とは、与えられることで満足する人間ではなく、自ら決断し、あらゆる困難に立ち向うことができる強靭な精神力を持つ人間なのではないでしょうか。
コメント (8)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする