goo blog サービス終了のお知らせ 

万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

政府系ファンドが生む大問題

2007年11月26日 20時31分49秒 | 国際経済
日経平均は続伸、中国政府系ファンドへの期待で一時400円超える上昇(ロイター) - goo ニュース

 さてさて、本当に、市場は政府系ファンドの活躍に期待を寄せてもよいのでしょうか?この問題、実は、市場主義経済、ならびに、株式会社制度の根幹に関わる大問題を含んでいるのです。

 まず、市場経済における問題とは、政治と経済の分離の問題でもあります。80年代以降、急激に市場がグローバル化した理由の一つに、制度的な政経の分離がありました。この分離によって、ある国の企業が他の国において事業を展開しても、直接的には政治または国際問題化しない、という状況がもたらされたのです。しかしながら、政府自身が市場のアクターとなってファンドを運営するとなりますと、この前提が崩れてしまうことになります。

 また、株式取得により、外国政府が企業の保有者となるという状況は、会社は誰のもの?の問題とも繋がります。純粋に株主のもの、ということになりますと、外国政府が持ち主となり、もちろん、経営権をも握ることになります。果たして、自国内に、他国の国家目的に従属する企業が続出することは、許されるのでしょうか?また、今回問題となっているファンドは、中国政府の外貨準備を基金に運営されると報じられていますが、ODA貸与国でありながら軍拡や宇宙開発を進める国に、自国の企業も莫大な配当を支払うという事態も発生してしまうのです。

 このように考えますと、中国系ファンドは必ずしも歓迎できませんし、以上の問題をきちんと議論しませんと、市場経済自体がつぶれてしまう恐れがあります。政府系ファンと民間ファンドとは、決して同じではないのですから。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする