万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

冷たい雨の降りそそぐ法隆寺

2008年05月10日 14時08分49秒 | アジア
胡錦濤国家主席、中国ゆかりの法隆寺や唐招提寺を訪問(読売新聞) - goo ニュース
 
 もし、現在に聖徳太子が生きておられたとしたら、太子は、仏教弾圧者であり民族虐殺に手を染めた人を法隆寺学問寺に快く迎え入れたでしょうか。あるいは、徳を積んだ太子のことですから、遠方はるばるやって来た”日の没することろの天子”に仏の教えを説き、上手に改心させることができたかもしれません。しかしながら、胡主席の法隆寺訪問の報に接し、日中友好ばかりが強調されたとしますと、これは、太子の御心に沿うものであったかどうか、疑問なところです。そうして、聖徳太子が示した日本国の外交路線に思い至るとき、この疑問はさらに強くなるのです。

 摂政の位にあって、聖徳太子が日本国の歴史に残した足跡は、対中外交における日本国の独自路線を打ち出したことにあります。歴代中華王朝は、冊封体制や朝貢制度をもって、近隣諸国を自らの勢力範囲に絡め取ろうとしました。隋の煬帝もまた同様であり、日本国をも従属させようと虎視眈々と狙っていたのです。しかしながら、聖徳太子は、隋の煬帝に親書を送ることによって、華夷秩序への編入を拒否します。ここに、東アジアにおいて、大陸の大国と、島国ながら自立路線をゆく国とが並列する体制が生まれるのです。聖徳太子が築いた独自路線は、今日に至るまで、日本国の基本路線となってきました。それにも拘わらず、胡主席訪日に際して、我が国の政府が示した態度は、先人たちの苦労を全く顧みていないように思えるのです。

 今日の奈良は、朝から冷たい雨が降っていたと言います。静かに法隆寺に降りそそぐ雨の滴が、聖徳太子の涙に思えてしまうのは、それが、我が国の不幸を暗示しているからなのかもしれません。

 よろしければ、クリックをお願いいたします。

にほんブログ村 政治ブログへ

 

コメント (1)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« チベットは同盟政策を目指しては | トップ | モラルの欠如が中国を滅ぼす »
最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
強制的に監禁虐待されている新井泉さんを移動監獄から救い出しましょう。 (啓子)
2008-05-11 08:10:20
ウイグル人やチベット人らを大量虐殺して権力ポストに就いた胡錦濤が日本で国賓として歓迎されているのは最悪だ。自分がハッピーになるためにはいくら虐殺してもいいという凶悪な殺人鬼を莫大な費用をかけてもてなしている日本人は漢族になったつもりらしい。日本人は何の罪もない新井泉さんを何十年にもわたって監禁虐待して食事も睡眠も与えないまま人生も健康も強制的に破壊した。このような残虐な犯罪を犯しておきながら彼らは犠牲者を顧みることなく、てめえらだけはのうのうと優雅な犯罪人生を謳歌しているのだ。こんなひどい日本政府を滅ぼさなければならない。
返信する

アジア」カテゴリの最新記事