万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

韓国‘戦犯企業’ステッカー問題-‘徴用工問題’は戦争犯罪ではない

2019年03月21日 13時48分04秒 | アジア
「日本戦犯企業が生産」学校所持品に明示 韓国で条例案
韓国では、またも一般の日本国民の想像を絶する事件が発生しております。今般の事件とは、京畿道議会において学校で使用している日本企業が製造した2万円以上の備品に対して‘戦犯企業’のステッカーを貼るよう義務付ける条例案が提出された、と言うものです。

 ‘戦犯企業’レッテル問題は昨年末の‘徴用工判決’と関連しており、第二次世界大戦当時、朝鮮籍の人々を徴用工として雇用した日本企業の製品を対象としているそうです。韓国の抗日抵抗期強制動員被害調査委員会によって既に「日帝強占期徴用企業」なるリストが作成されており、仮に同条例案が可決されれば、京畿道の全学校では直ぐにでもステッカー貼りの作業が始まることでしょう。先生達が何かに憑りつかれたかのように血眼になりながら学校中の備品をチェックし、‘戦犯企業’の製品を見つけ出してはステッカーを張っている姿は恐怖映画のシーンにも近い光景となるのですが、そもそも、戦犯という用語の使い方からして間違っているのではないかと思うのです。

 ‘戦争犯罪’とは、狭義の法律用語としては戦時中において行われた戦争法に反する行為を意味しています。仮に、韓国側が戦争犯罪という言葉を自らの国を被害国と想定して使用しているとしますと、日韓間に横たわる‘徴用工問題’は、教義の意味での戦争犯罪には当たりません。その最大の理由は、第二次世界大戦当時、日本国と韓国は戦闘状態にはなかったからです。戦争をしていないのですから、当然に、‘戦犯’も存在するはずもないのです。また、戦闘行為に従事していない民間企業が‘戦争犯罪’を問われることもありません。

 それとも、韓国側は、同用語を国際軍事法廷における有罪判決を根拠として‘戦犯’という言葉を使用しているのでしょうか。第二次世界大戦にあって敗戦国となった枢軸国の諸国の戦争責任者は、戦後、連合国側が設置した軍事法廷において裁かれ、有罪判決を受けて処罰されましたが、韓国の謂う‘戦犯’とは、こうした軍事法廷における‘有罪’を根拠としているとも考えられます。しかしながら、軍事法廷を根拠とするならば、ドイツもまたニュルンベルク裁判においてナチスの幹部が多数有罪判決を受けております。この基準に従えば、ドイツの企業もまた‘戦犯企業’とされなければならず、ドイツ製品にも戦犯企業のステッカーを張る必要があります。第二次世界大戦にあっては、ドイツの大企業の殆ど全てが国策企業としてナチス政権に協力しております。今日の企業でも、IGファルベン等の国策企業の流れをくむドイツ企業も多いのです。

 あるいは、韓国は、当時の徴用を韓国人に対する強制労働と見立て、「強制労働二関スル条約(1930年採択)」における違反行為として‘戦犯’という表現を用いているのかもしれません。しかしながら、この用法におきましても、徴用工に対しては国家総動員法に基づいて賃金が支払われていましたし、民間企業による募集による雇用の場合にも、契約関係に基づいて当給与は支払われていましたので、強制労働には当たりません。給与未払いがあったとしても、この問題は、日韓請求権協定で解決済みであり(もっとも、韓国大法院は未解決とする判断を示していますが…)、当時、朝鮮籍の労働者を雇用していた日本企業が‘戦犯’として批判される筋合いはないのです。日本国政府も日本企業も、朝鮮籍の人々に強制労働など課していないのですから。

そして、この立場に立てば、実のところ、韓国は、従来の自らの主張を否定するに等しくなります。韓国の人々は、これまで、カイロ宣言に記された‘朝鮮の人民の奴隷状態…’という政治的に誇張された表現を後追いするかのように、朝鮮半島の日本統治を日本国による過酷な植民地支配とみなし、自国民が奴隷状態に置かれた時代として位置付けています。仮に奴隷化が事実であれば、徴用工に限らず全ての存命の韓国人が対日訴訟を起こすはずです。‘徴用工訴訟’の原告が徴用工、あるいは、日本企業に雇用されていた朝鮮籍の労働者に限られていることこそ、日本国が朝鮮半島の人々を奴隷化していなかった証拠ともなるのです。

以上に、韓国による‘戦犯’の使用法につきましてその誤用を述べてきましたが、ソウル市議会ではさらにエスカレートして、‘戦犯企業製品’の不買条例案が発議されているそうです。こうした過激な動きに対しては、韓国国内からもWTO違反となるリスクなどが指摘され、反対の声もないわけではないものの、採択される可能性は相当に高いとも報じられています。一方的にリストにアップされた日本企業は冤罪の被害者となるのですから、これらの条例が成立した場合、日本国政府は、当時の朝鮮籍の人々の労働実態を明らかにするためにも、法廷での解決を目指すべきなのではないでしょうか。

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6 コメント

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Unknown (Unknown)
2019-03-22 23:32:39
私が朝鮮半島でしたこと
架橋・農地改良・道路建設・鉄道工事
1928年―1946年
松尾茂
読んだことありますか?
読書家の倉西さんですから、もうとっくに読んでるかww
アマゾン辺りで買えるし、どこかの図書館にもあると思います
内地の松尾茂さんが縁あって朝鮮半島に渡り土木事業に携わる
戦後50年以上経ってこの本を書き上げた
政治思想は一切なく、ただ思い出
ごくごく普通の一般人が書いたものだからこそ、歴史的価値がある本です
文化人・知識人と呼ばれる日本人が統治時代、いかに日本人が朝鮮人に酷い事をしたか、差別をしたか、を繰り返し発信し続けているが、松尾さんはひょうひょうと、当時の暮らし・仕事ぶりを記しています
K―ポップファンになり韓国人から洗脳された日本人にも読んでほしい一冊です
日本の敗戦が決まった時、現地の人は日本人に何をしたのか?
感情的にならず、淡々と記しています

韓国の大学教授が色々調べ「あの当時は中国・日本・ロシアのどこかに編入しなければならなかった。日本に編入されたのは不幸中の幸いだったのではないか?ロシアに統治されていたら虐殺が起きた」と発言したら大バッシング
韓国語は解らないが「不幸中の幸い」という韓国語は光、という言葉が入るらしい
それで韓国は逆上
学問であり研究の結果の意見だ
学者の意見も受け入れない

昔の朝鮮半島の人は親日的な人が多かった
感謝してくれる人・日本に憧れる人
そういう歴史の生き証人がどんどん去っていく
戦後、反日教育をしても、経済に大きな開きがあった
日本の芸能などの文化にも
それで反日教育を受けても日本に憧れる韓国人は絶えなかった
だが輸出先1位が日本ではなくなった
芸能人もパッと見は日本と遜色なくなった
教育を、真実と信じ切った若い韓国人が成長・政治の世界に飛び込んでいく


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Unknownさま (kuranishi masako)
2019-03-23 10:13:58
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。

 事実を述べることが罪となる社会は、やはり狂っていると言わざるを得ません。韓国の現状は、学校が洗脳の場と化す恐ろしさを語っているように思えます。人間の精神とは、かくも弱いものなのでしょうか。
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Unknown (Unknown)
2019-08-06 16:17:16
韓国・落星台経済研究所のイ・ウヨン研究委員は学者として研究した結果、ジュネーブの国連欧州本部で、朝鮮人の徴用工は自分の意思で日本に渡った
賃金格差も無かった
と発言
韓国内でも
日本に渡った朝鮮人は強制で奴隷のように働いた
これが学会の一般的意見・国民的常識
このような主張は歴史的事実とは全く違っている
賃金は基本的に正常に支払われ、強制貯金は確かにありましたが、それは日本人も同じ
誇張を超えて歴史歪曲・捏造といえます
いつまで韓国人は日本人を絶対悪・韓国人は絶対善と考えるのでしょう
と発言
2019年8月4日Mrサンデーではこれを取り上げた
韓国のSNSで
私の祖父も日本に行ったおかげで田んぼを買えた。虐待の話などきいていません
との書き込みがあった事を報道
これを報道するなら、ついでにイ・ウヨン研究委員が「この親日野郎」と暴漢に襲われた事も報道すればいいのに
駆け付けた警察官は暴漢の男2人を拘束しなかったとも報道されている
イ・ウヨンさんは政治家ではなく、学者
ジャーナリストの柳澤秀夫は1965年日韓請求権協定当時は冷戦で国と国との関係で世界が成り立っていた
冷戦構造が壊れ個人・人権に世界の意識が変わってきた
その部分にスポットライトを当てなきゃいけない
徴用工問題は理屈だけで納得できないと発言
情緒論で何度も賠償請求おかわり、世界中に慰安婦・徴用工像を建設されちゃかなわない
賠償金は日本人の血税
柳澤ジャーナリストは税金払ってないのですか?

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Unknownさま (kuranishi masako)
2019-08-06 21:01:12
 コメントをお寄せくださいまして、ありがとうございました。

 事実を丹念に拾って行けは、日本国による朝鮮統治の時代にあって、朝鮮の人々の’奴隷化’は虚偽であることは分かるはずです。韓国側の不当な要求に対しては、日本国政府も、証拠を提示して反論すべきではないかと思います。仲裁委員会、あるいは、ICJへの提訴を方針として打ち出しているのですから、なおさらのことではないかと思います。
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Unknown (Unknown)
2019-08-08 18:50:21
ホワイト国除外決定は徴用工問題の報復!と非難の韓国
元経済産業省貿易管理部長で、韓国のホワイト国入りを担当した細川昌彦氏はマスコミに出ずっぱり
細川氏によるとアメリカは嫌がっていたが、韓国に懇願され、各国に頭を下げ、お願いしたのは日本
軍事転用云々以前、あの原料は扱いが難しく大変危険
事実、韓国で爆発事故を起こす、ずさんな取扱ぶり
それを日本が延々教え続け、危なっかしいな、と思いつつ韓国政府の圧力に押されホワイト国決定
なのに、軍事転用の可能性ありの第三国へ輸出されていた
そもそも原料を韓国に輸出しないのではなく、今まで簡単だった手続きが、以前に戻ります、それでも台湾より上のランクですよ、と説明してるのに韓国の怒りは収まらない
以前から反日と受け取られても仕方ないような発言をしてる在日韓国人のジャーナリストでさえ、今回の韓国政府の騒ぎは「韓国に悪気はないが、元々いいかげんな気質の人達、ずさんな管理で流れちゃったかな?と日本は好意的に考えてくれてたのに。これは意図的に韓国政府が流したのがバレた!とにかく北朝鮮に流したい韓国が逆ギレしてるのではないか?」と推理
この方、同胞の気持ちは解る、韓国内の大騒ぎは予想していた!と発言
ホワイト国は先進国の証
韓国の政治家が次々
恥をかかされた
面子を潰された
と発言してるとおっしゃってました
怒りのツボ、そこ!?
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Unknownさま (kuranishi masako)
2019-08-09 07:56:31
 コメントをお寄せくださいまして、ありがとうございました。

 おそらく、韓国の’逆切れ’の要因は複合的なのでしょうが、韓国政府が意図的に流したのばれた、という説は、案外、事実なのではないかと思います。もしかしますと、日本国政府は、日本製素材の流れを調査したアメリカからホワイト国除外を要請された可能性もあるかもしれません…。何れにいたしましても、韓国の行動が極めて怪しいことだけは、確かなように思えます。
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