万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

民営化と植民地化は一緒にやって来る?

2018-01-05 16:46:15 | 日本政治
報道に拠りますと、日本国政府は、地方自治体が運営しているインフラの民間への売却を促進するために、法改正を行う方針なそうです。法案の主たる改正点は、(1)売却に際しての地方議会の決議不要化、並びに、(2)利用料金の承認制から届け出制への変更にありますが、この法改正、日本国の植民地化を招くリスクが潜んでいるのではないでしょうか。

 同改正案が実現すれば、第一に、地方自治体の長は、自らの権限でインフラの売却を決定することが可能となります。首長を選ぶ地方選挙が、公約においてインフラ売却の是非を問う一点争点選挙であれば、選挙結果によって住民の意向が反映されますが、それ以外の場合には、住民の預かり知らぬところでインフラ売却が決められるリスクが高くなります。また、同法案は、地方議会の権限剥奪をも意味しており、地方議会レベルで売却を阻止することも不可能となります。

第二に、インフラの売却に際しては競争入札が予測されますが、インフラを落札した企業は、届出制への変更により、利用料金を比較的自由に設定できるようになります。法改正の狙いの一つは、民間資金を活用するPFI方式による公共料金の引き下げですが、独占的権限を獲得した企業は、利益率を低下させる値下げを申し出るでしょうか。民間事業者がインフラの運営権のみならず、所有権までも取得するとしますと(水道等の分野では老朽化対策でもあるので、設備の所有権も移転する可能性が高い…)、競争メカニズムが働かない永続的独占体制となります。地方自治体の負担は軽くなっても、住民の負担が重くなれば、元も子もありません。

加えて、同法案には、隠れた問題点があります。それは、インフラ市場に参入する民間事業者は、必ずしも日本企業とは限らないことです。近年の民営化とは、海外企業に向けた市場開放と凡そ同義となる場合が少なくないからです。水道事業には既にフランス企業が進出済みですが、最近、海外のインフラ投資に積極的に取り組んでいるのが中国です。中国企業も、13億の人口規模を背景にインフラ事業において競争力を付けてきており、日本国のインフラ市場の開放は、絶好のチャンスとなるはずです(日本国の再生エネ市場も海外勢が席巻…)。インフラ売却の公開入札においてコスト面で優位にある中国企業が落札した場合、日本国の電気、水道、ガスといったインフラは、永続的に中国の手に落ちることになりましょう。

この構図、近代以降の植民地化のプロセスに類似しています。植民地化の先兵となった東インド会社は民間事業者ではありましたが、列強勢力はアジア・アフリカ等におけるインフラ・コンセッションの取得を足掛かりとして、その支配圏を拡げています(空間的支配へ…)。今日にあっても、政府系も含め、資金力に優る中国企業が大挙して日本国のインフラ事業に参入してきた場合、日本国の独立や安全保障上のリスクが皆無であるとは言えません。親中派の地方自治体の長の下では、売却に際して中国企業に対して特別の便宜が図られる恐れもあります。アメリカでは、対米外国投資委員会が、アリババ系の投資会社アント・フィナンシャルによる国際送金大手のマネーグラムの買収を阻止したと伝わりますが、以上に述べてきた諸問題がある以上、法改正には慎重であるべきではないかと思うのです。

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コメント (4)