万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

今年の初暴露は中国の最高機密文書

2018年01月04日 11時26分48秒 | 国際政治
「北の核容認」「核実験自制なら体制保証」 中国機密文書?米サイトが暴露
 報道に拠りますと、今年最初の暴露は、北朝鮮問題をめぐって中国共産党が作成した最高機密文書となりそうです。中国外務省は、フェイク・ドキュメントとして否定しておりますが、この機密文書、本物である可能性は相当に高いのではないでしょうか。

 発信元は米ニュースサイト「ワシントン・フリービーコン」ですが、同機密文書は、昨年9月15日に中国共産党中央弁公庁によって党中央対外連絡部宛てに作成されたとされています。文書の内容は、硬軟織り交ぜた北朝鮮懐柔政策、並びに、国際社会対策によって構成されているようです。対北政策としては、核実験の自制を条件としつつ、(1)金正恩体制の保証(2)新型の短・中距離弾道ミサイルやクラスター爆弾等の高性能兵器や軍事技術の供与、(3)インフラ支援の増額などの“あめ”の提供を約する一方で、核実験を自制しない場合の“鞭”としては、「罰則的措置」を科すとしています。一方、国連安保理において対北制裁決議を成立させた国際社会に対しては、対北石油輸出の規制は“象徴的にとどめる”、即ち、実施はポーズだけとする本音を語っているのです。

 以上の内容は、中国の公式見解とは裏腹であり、訪中時のトランプ米大統領との合意をも違えています。中国外務省の耿爽副報道局長が“少しでも常識がある人なら文書が偽造であることを見抜ける”と述べて否定に躍起になるのも、この文書が本物であれば、国際社会における中国の信頼性は著しく損なわれ、今後の対米交渉などにも決定的なマイナス影響を与えるからなのでしょう。言い換えますと、再三指摘はされてはきましたが、証拠文書を以って“裏の顔”を持つことが判明した以上、中国は、国際社会における信頼に足る誠実な交渉相手とは最早見なされなくなるのです。

 同文書は、中国の二面性を暴露しているのですが、実のところ、中国の公式見解とは逆ではあっても、実際の行動とは凡そ一致しています。本気で北朝鮮の非核化を望み、国連決議を遵守するつもりがあるならば、対北密輸の取り締まりの徹底など、北朝鮮に対する制裁をより厳格に実施することでしょう。また、現時点では、中国には、金正男氏の長男を擁立するなど、金正恩政権の転覆を画策している気配は見られません。加えて、弾道ミサイル等の技術供与についても、敢えて長距離のICBMを含まない点においては、アメリカへの特段の配慮が窺えるのです。イランの核合意の如く、核実験、並びに、ICBMの“凍結”で手打ちにしたい中国の本音が透けて見えるのであり、アメリカの“融和派”が合意できる範囲に巧妙に落とし込んでいるのです。

 同文書の信憑性は、アメリカの“宥和派”のみならず、日本国をはじめとした世界各国の親中派との連動によってもさらに高められています。1月16日には、カナダのバンクーバーにおいて、宥和派とされるティラーソン米国務長官の要請の下で、朝鮮戦争時の国連軍参加国に日韓両国を加えた閣僚級会合が開催されるそうですが、この会合においても、チャイナ・ロビーの浸透ぶりからすれば、同文章に記されている中国の意向が反映される可能性も否定はできません。そしてそれは、習近平国家主席が提唱する「新たな大国関係」における米中合意、即ち、日本国の置き去りを意味しかねないのです(短・中距離弾道ミサイルについては技術供与…)。新年早々の暴露ニュースの真偽は詳細な検証を待つ必要がありますが、日本国は、今年こそ、中国の二面性、否、”二枚舌”をも見定め、迫りくる現実のリスクに賢明、かつ、迅速に対処してゆくべきではないかと思うのです。

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*御礼申し上げます

 私事ながら、昨年の暮れ、父は二度の心肺停止という絶望的な危機を脱し、奇跡的に一命を取り留めました。父の病に際し、ご心配、並びに、お見舞いをたまわり、まことにありがとうございました。今なお入院中ではありますが、幸いにして命を長らえましたのも、救命医療に携わられておられる方々のお蔭と、深く感謝いたしております。また、夜間、タクシー会社の電話番号を調べてくださったコンビニエンス・ストアーの店員の方、そして、父危篤にタクシーの順番を快く譲って下さった若い女性の方など、見も知らぬ方々のご親切に人の世の温かさに感じ入る日々ともなりました。この場を借りまして、皆さま方に、厚く御礼を申し上げる次第でございます。


コメント (4)
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