万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

移民への質問-”あなたの祖国が移民に占められてもよいですか?”

2016年06月18日 14時17分31秒 | 国際政治
英首相「不寛容排除」訴え=野党党首と議員殺害現場訪問―国民投票、残留派同情論も
 EU離脱の是非を問う国民投票を間近にして、イギリスでは、女性議員の殺害という忌まわしい事件が発生しました。犯人の背景が取り沙汰されおりますように、同国での離脱派と残留派の論争を見ておりますと、移民問題が主要軸となっているように思えます。

 残留派の人々は、EU加盟国であることの経済的メリットを訴えておりますが、その努力もむなしく、なかなか残留派の人々を説得するには至っていないようです。何故ならば、離脱派の人々にとりましては、移民によって自国が奪われてしまうという危機感こそ、離脱を選択する理由であるからです。特に、移民人口が過半数を超えたロンドンでは、史上初のイスラム系市長が誕生しており、一般のイギリス人にとりましては、移民の増加は、英国という国名は残っても実質的に祖国が喪失する、という切実、且つ、現実的な問題なのです。

 残留派が、たとえ”恐怖プログラム”と称される”脅し”をかけても、離脱派にとりましては、自国喪失の恐怖の方が遥かに上回るのです。イギリスに限らず、移民問題を抱えていない国は殆どなく、今や、世界共通の課題と化していますが、この問題に関して常々疑問に感じるのは、移民の人々の”移民という行動”に対する理解です。人間とは、立場によって意見が変わることがありますが、移民する側の人々は、”あたなの祖国が移民に占められてもよいのですか?”という質問を受けた場合、何と答えるのでしょうか。おそらく、自己矛盾を避けるために表面上は肯定的な意見を述べたとしても、大半の人々は、本音では、”No”なのではないでしょうか。移民の人々も、出身国に居住していた時には、移民反対であったかもしれないのです。

 移民する人々には、”自分はよくでも、他者はだめ”というダブルスタンダードが見受けられます。例えば、イスラム諸国にとりましては、キリスト教徒や仏教徒など、異民族によって自国人口が占められてしまうことは、悪夢以外の何ものでもないことでしょう。移民問題の解決に際して多面的な見方が必要であるならば、移民する側にも、他の諸国や人々を思いやる気持ちを求めるべきなのではないでしょうか。”他人の嫌がることはしない”は、普遍的な道徳律であると思うのです。

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