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万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

神経科学が示す長期雇用と正社員のメリット

2014年06月16日 15時31分56秒 | 国際経済
「限定正社員」賃金は正社員の8~9割…指針案(読売新聞) - goo ニュース
 最近、『脳の探検』(フロイド・E・ブルーム他著、ブルーバックス、講談社)という本を読んでおりましたところ、ストレスに関する興味深い記述を発見しました。それは、長期にわたるストレスを受けると、病気に罹りやすくなる、というものです。

 5000人規模の研究調査によりますと、多くの事例で、患者の発症前に生活上の劇的な変化があることが見つかったそうです。また、カプランによるストレス実験は、猿を用い、アテローム性動脈硬化との因果関係を証明したものですが、著者は、人間も同様であると推測しています。長期的な不安やストレスに晒されると、脳内の神経伝達物質のコントロールに異常が生じ、病気を引き起こすらしいのです。この観点からしますと、派遣といった非正規社員の立場にあったり、何時でも解雇可能な状態に置かれていますと、不安定状態のストレスにより健康を害する原因となることが分かります。日本型の終身雇用制度は、グローバル・スタンダードから逸脱しているとして兎角に批判を受けてきましたが、日本人の平均寿命が世界トップクラスにあるのは、雇用の仕組みにあったのかもしれません。また、最近、先進国において麻薬やアルコール問題が深刻化している背景にも、これらに含まれている不安を抑制する成分への依存を挙げることができます。転職や失業は、人手不足となる経済の成長期には恐れるに足りませんが、低成長時代には生活基盤の喪失という重大なストレスを意味するからです。才能や能力に恵まれており、どのような状態でも転職可能な人は、ごく限られています。

 もちろん、終身雇用制にも問題点がないわけではありませんが、雇用政策を立案する場合には、科学分野での研究成果をも取り入れ、雇用形態が与える国民の心身への影響をも考慮すべきではないかと思うのです(この必要性は、雇用政策に限られたことではありませんが…)。そのうちに、最も人間が能力を発揮したり、生き生きと活動できる環境条件に関する研究も進むかもしれないのですから。

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コメント (2)
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