万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

英女王面会脅迫事件-中国外交の伝統か

2014年06月13日 11時06分33秒 | 国際政治
女王との面会なければ…中国側「直接的な脅し」(読売新聞) - goo ニュース
 世界第二位の経済大国にのし上がった中国は、外資系企業も多数進出していることから、近代国家であるとする錯覚があります。しかしながら、中国の行動パターンは、実のところ、古代と然したる違いがないのです。

 中国外交の主たる特徴として、(1)冊封・朝貢体制の歴史に根付いた序列意識、(2)外交の内政への利用、(3)軍事力の効果的活用…などを挙げることができます。本日も、英国訪問に際して、中国の李克強首相が、エリザベス女王との面会が実現しなければ訪英を撤回すると脅したと報じられています。この中国の行動を上述した三つの特徴から分析しますと、(3)軍事力においてイギリスを上回ったとする中国の自信が、イギリスに対する脅迫を可能としており、(1)敢えて国家元首より格下の首相がイギリスの元首と面会することで、イギリスを政治的にも下位に位置付けようとしていると解することができます(国際ルールや原則は無視…)。(2)イギリスを格下に置いたとするアピールは、当然に、中国国内でしか効果はないのですが、李首相としては、外交的な手柄として国内的な自身の立場の強化に利用できます。そして、現習近平主席が、副首相時代に日本国の天皇と特例で会見した後に主席に就任した事例に照らしますと、外国の元首に認められることが、次なる昇進へのステップと考えているとも憶測されます。古代にあっても、中国の各王朝は、自らの正当性を国内にアピールするために、官位などを遠方の国にまでばらまいていました。

 百戦錬磨のイギリス外交もまたしたたかさで知られておりますが、習主席と比較しますと李首相は経済優先の穏健派であり、中国の人民元の取引等で有意なポジションを確保したいイギリスにとりましては、中国側の要求に譲歩する姿勢を見せながら、暗に、中国政界における李首相の基盤固めに協力しているのかもしれません。とは申しますものの、中国が、古代国家の様式を受け入れるよう21世紀の国際社会を脅迫しているとしますと、それは、到底、無理というものではないかと思うのです。

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コメント (2)
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