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下記の文章は、鳴瀬彰夫(神奈川大学)「教育思想の現在 斎藤喜博を超える試み(1)」の論文からの抜粋したものである。なお、後述の斎藤喜博の「雲」の授業記録は、向山洋一の授業と対比するために、斎藤喜博著「わたしの授業 第四集」から私が抜粋したものである。なお、コメントも私が記したものである
○向山洋一が斎藤喜博にどのようにみずからの教育実践を対置していこうとしたのかをとりあげてみる。
・向山は斎藤喜博を追う。斎藤喜博の授業が「職人・芸」という世界を身にまとうのにたいして、向山は「プロ教師・技術」を対比する。
・向山は、斎藤の授業における「芸」の世界から、「教育技術」を抽出しようとする。
・向山は「誰が指導してもできるやり方」をめざして、斎藤喜博を追う。このやり方を広め、教師全体の共同財産としていくことを目的とした運動体の出発であった。
・「教育技術法則化運動」は1980年代後半から大きな広がりを見せた。それは、教育の場におけるひとつのマニュアル化と捉えてよのかもしれない。
・では、授業のマニュアル化が、何を引き起こすのか。ひとつの詩を中心におこなった向山の授業を見てみたい。
向山洋一の授業
教材
てふてふが一匹韃靼海峡を渡って行った
安西冬衛
教師:4列、起立
教師:前から読んで、読んだらすわりなさい。
・・・・・・・・・・・。
教師:全員起立
教師:5回読んだらすわりなさい。
・・・・・・・・・・・。
教師:これを読んで、何か考えられることを、その紙に箇条書きに、一、二、三、四と書きなさい。
・・・・・・・・・・。
教師:では、自分が思ったこと、考えたことを発表してもらいます。
・・・・・・・・・・。
教師:これ(詩)を絵にして、話者を目玉で書きなさい。
・・・・・・・・・・。
教師:いろいろな絵があります。一つずつ、ちょっと、発表してもらいます。
以下略
この授業について、鳴瀬彰夫は次のように感想を記している。
授業全体にかんじられるのは、教師から生徒への一方的な働きかけである。
一つの型にはめようとする意志である。
自由に生徒に発言させているようでいて、授業には初めからレールがひかれており、その枠組みのなかで、進行するように持っていく強引さが見受けられる。
新鮮さが削ぎとられてしまっているような思いがしてならない。果肉を食べ終わって残された干からびたリンゴの芯のようである。
授業において、生徒の反応が新鮮すぎるとき、授業の進行が脅かされるのではないかと、教師は急いで「教育技術」の中にその新鮮な反応をとりこもうとする。
授業に安定をとりもどそうとする。けれども、既成のやり方「法則化」のコースにのせてしまった途端、それは初めにもっていた新鮮さを失って、ありふれたものに変わってしまう。
これに対して斎藤喜博の授業を見てみよう。
斎藤喜博の授業
雲 山村暮鳥
おうい雲よ
ゆうゆうと
馬鹿にのんきそうじゃないか
どこまでゆくんだ
ずっと磐城平の方までゆくんか
教師:「みんないい顔をしているね」と言いながらプリントをくばる。
教師:くばられたら、小さい声で読んでください。
子ども:めいめいで小さな声で読む。
教師:声を出して読んでください。
子ども:声を出して読む。「暮鳥」が読めない。
教師:わかんないところはぬいておけばいい。ぬいて読んでごらん。
・
・
・
教師:非常にいい読みですね。みなさん自分で、この(詩)なかへはいって、なかのことを読もうとしている声です。
子ども:落ちついた読みをする。
教師:うん。どんなことが書いてあった。
子ども:無言。
教師:大きなヘビが出たことがかいてあった?言ってください。
子ども:雲に話しかけている。
以下略
向山の授業にたいして、斎藤の授業は、創造的、解放的である。子どもを信じ、子どもが発見する授業であり、子どもの可能性を引き出す授業である。
これは授業の最初の部分だけを記したのであるが、授業が進むにつれていっそう豊かになっていく。やはり斎藤喜博は凄いと言えよう。
私たちの「浜松授業研究の会」は、斎藤喜博の流れを継承しているが、この会の全国の主宰をしているのが、宮坂義彦である。
斎藤の授業は職人芸と言われ、それをまねることはやや難しさがあるが、斎藤の授業のよさを失うことなく、それをわかりやすく、教材解釈や授業展開等に導いてくれたのが宮坂義彦である。今さらではあるが、宮坂義彦先生の指導を受けるありがたさを感じてならない。
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