子どもを大事にするということはどういうことか。それは「手入れ」の問題だと思います。車の修理ならば全部どうすればいいかわかります。子どもの場合はそうはいかないのです。だから何か都合が悪いことがあれば相手の反応を見ながら手入れをしていくしかない。相手の反応を見ながら手入れしていくというのは、非常に手間のかかることです。
お母さんがうるさいのはなぜか。毎日のように飽きずに、ああしちゃいけません。こうしちゃいけません、こうしなさい、ああしなさいと言い続ける。子どもとはそうやって毎日手をかけていかなくてはいけないものだからです。
車ならば悪いところを交換すればそれで当分何ということはない。しかし、相手が子どもならば、少しずつ相手を見ながら毎日毎日手入れをしていくしかない。それは稲を育てるのと同じです。稲というのは太陽の光と水と肥料で育つものだと言って、放っておいたらどうなるか。雑草だらけになって、稲以外のものの方が一生懸命育ってしまったということになりかねません。結局、毎日、田んぼに行くしかない。雑草は抜かなくてはいけないし、イナゴは追い払わなければいけない。
その手入れを上手にするためには、根気が必要なのです。子どもを育てるのも同じです。 まともな親なら子どもの存在をきちんと認めているはずです。毎日心にとめている。そうしていれば大体普通に育つんです。
養老 猛著「超バカの壁」より