前回のブログ「本年度最後の授業参観・保護者会」で授業について記したが、私が卒業を迎える子どもたちによくした授業の一つは百田宗治の詩「怒っている海」である。
詩の内容からいっても卒業していく子どもたちにうってつけと言えよう。特に「ぼくは海にまけない人間になって海から帰った」がいい。あんなにも心弱かった少年(ぼく)が、海にまけない人間の姿を目にして強い心に変わっていったのだ。
卒業する子どもたちが、こころ折れそうなとき、この詩を思い出してくれたら望外の喜びと言えよう。
怒っている海 百田宗治
ある日、ぼくは海を見に行った。
海はひどく怒って
ぼくをめがけて白い大きい波をたたきこんだ。
波はぼくよりも背が高かった。
しぶきがぼくの顔や肩にかかった。
ぼくは怒っている海のしぶきのなかで、
しばらくじっとようすを見ていた。
海の怒りは、遠い灰色にくもった沖の方から
はじまり、今にもこの陸地を呑みこんでしまい
そうだ。
小舟が一そう波のあいだにもまれていて、
とおい半島のさきに白い灯台が見えた。
あの中に人がいて仕事をしているのだなと思うと、ぼくは、海にまけない人間の力を感じた。
怒れ、怒れ。
腹のすむまで怒れ。
ぼくは海にむかってそう言った。
ぼくは海にまけない人間になって海から帰った。 ぼくをおっかけるように、
海がまだ松林のなかでがなっていた。