子らと親たちの安心の居場所
堺のびのびルーム訪問記
/////楽しい学童保育/////
先日、堺市の五箇荘小学校ののびのびルームを訪問させていただいた。一年生から三年生までの児童の約半数139人(120世帯)が利用しているという。2つの教室はすし詰め状態。
人なつっこい子どもたちが、なんと廊下にも座り込んで、牛乳キャップをめんこにして遊んでいる。教室の中では、宿題をしている子たちあり、遊んでいる子たちありで、なんとも騒然としている。
しかし、顔を合わせた子どもたちの表情がいい。この子たちは大人を信用しているなあと感じた。学童がこの子たちにとっての安心できる、自分らの居場所になっているという空気だ。
しばらくしたら指導員が、これから「めんこ大会」をするからと指示すると、2つの教室にそれぞれグループごとに着席。言葉が届いている。喧嘩をして泣いて座り込んでいる子もいるが、指導員も子どもたちもさりげなくかかわっている。ベタベタしていないのがいい。
なんとこの遊びは、いろいろ工夫されていて、実に面白い。「めんこ銀行トトロ支店」があり貯金できる。指導員用の銀行もある。めんこを落としてあったら届けられる交番もある。グループごとに競争して、どのチームが一番めんこを獲得したかを勝負する。最後にちょっとしたしかけがあって得点が倍増するというのもわくわくだ。子どもらはなかなか真剣だ。
/////親たちも活発/////
親がやって来た。何か用があるのかと思えば、いっしょに遊び、いっしょにおやつも食べるという。あるお母さんは9割の子の名前を知っていて「子らの笑顔見るのがうれしくてね。こんな子ども時代があるのがうらやましいですよ」と言う。「今日、もうすぐ『のびりんピック』というのがあって、子どもたちにドッヂボールの試合勝たせたくて特別に来たんですよ」と笑う。わが子以外の子どもたちとの関係が豊かで、親の目が「わが子たち」に向いているのが実にいい。
何人かお母さんが来られたので話を伺う。親たちの活動もなかなか活発で、楽しそうだ。いろんな行事を開催しているが、1世帯一役で無理のない方法で、みんなが関わろうと努力されている。春の歓迎会、バーベキュー大会、夏はキャンプと親子であそぼうの会、ハロウィンパーティー、親たちの応援で遠足も実施。クリスマス会、「トトドラカフェ」というのがありパフェ作りを楽しむようだ。新年会、お別れ遠足、年度末には「ありがとうぜんさい」というのもやっているようだ。こんなんやってるんですよと私に話してくださるお母さんたちが、なんとも楽しいんだという雰囲気がビーンと伝わってくる。
さらには、地域や学校の教職員との協力関係を保ちながら、共に活動を広げているのがまた魅力的だ。カフェでパフェを作ったり、ぜんざいなどを作ると、学校の先生方にもおすそ分け。そんなときに「かっちゃんこの頃学校でどうですか」と声をかけ、交流もできると言う。
そして、地域のドッヂボールの会とも交流を持ち、地域の皆さんから絵本や一輪車など使ってくださいといただくこともあり、みんなに支えられているという実感があると言う。
/////指導員の創造的ロマン/////
こうした活動の様子を見聞きすると、なんといっても子どもたちがいきいき子どもらしく安心して活動しているのが根っこにある。
そして指導員の中に、どんな活動を創っていくかというロマンがある。親とつながる。親と親がつながる。地域とつながる。そして何よりも子どもの自主活動を軸にした楽しい保育内容を創っていくという考えがきちんとある。だからこそ親は指導員を信頼していて、援助したいと思うと言う。
親の中にも中心になっているリーダーの人たちが育っていて、この人たちは「いっしょに○○する」「伝え合う」ことを大切にして、よく話をしあっている。
まさに親にとっても楽しい居場所になっていて、親もここでは自分の本音が出せると言う。人と人とのつながりに大きな困難のあるこの時代に、子どもを真ん中に親と子たち、親と指導員、親と親とのつながりが地域をバックボーンに広がり、展開されていることに、ずいぶん元気をもらった訪問であった。
(とさ・いくこ和歌山大学講師)