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またあしたね~土佐いく子の教育つれづれ②

2011年11月09日 | 土佐いく子の教育つれづれ

元気発信する大阪の先生~作文教育で笑顔の学校づくり

 大阪作文教育研究大会が開催されました。2日間で200人を超える先生方が、恐ろしいほどの多忙の中かけつけてくださって、ともに学び合いました。大学生を始め若い先生方の参加が多かったのも特徴的でした。

 1日目は、羽曳野市の高鷲南小学校の先生方との共同研究で、12の学級で公開授業が持たれました。この学校は、昨年から学校あげて作文教育の研究に取り組まれ、綴り方のある学校づくりが進んでいるのです。廊下のあちこちに作文が掲示され、全校放送で作文が読まれもします。職員室では子どもの作文を持ち寄って「この子かわいいやろ。見て見てこの作文!」「この作文どう読んだらいいかわからん、意見聞かせて。この頃気になる子でね…」。こんな日常のある学校です。

 やんちゃな子どもたちですが、言葉に耳を傾ける空気ができてきて、作文書くのが大好き。「先生、はよ書こうよ」と言い、作文を読み合うのが楽しいと言うのです。

 読者の皆さんは小学校の頃、作文が好きでしたか。書くことが好きでしたか。大学生に聞いてみても、嫌いだった学生が大半でした。なぜって「書くことは遠足と運動会。3枚以上書けといわれたり、上手に書け、詳しく長く書けといわれて、もう大嫌いでした」と言うのです。

 私たちは、そんな作文教育はしません。子どもたちの本当に書きたいことを自由にのびのびと自分の言葉で表現することを大事にしています。枚数も自由です。書くことは、自分を表現することで、上手、下手と言うより、生きている姿そのものなのですから、どの子の作文も大切に読みます。

 大人も子どもも聞いてほしいことがあってそれを表現したい、受け止めて共感してもらいたいと強く願っている今です。それは生きていく元気をもらう営みなのです。

「きのうすしたべに行ってうまかった。たことマグロ五さらもくってうまかった」

 こんな文章も見過ごしていきません。父ちゃんの給料がやっと入って、夕べは家族そろって寿司食べに行ったんやで。大好きな寿司を5皿も遠慮せんと食べて、先生、うまかったでと心はずませて書いているのです。「そうか、そらよかったなあ。おいしかったな。家族そろって行って来れてうれしかったね」とその子の暮らしに寄り添って、子どもを受け止め、生きる力を励ます営みをしているのです。

 こういう教育が学校あげて取り組まれたらどうなるでしょうか。先生方が子どもを発見し、暴言を吐いていたあの子がかわいくなったと言うのです。子どもにも先生にも笑顔が戻ってきます。子どもたちが穏やかになり落ち着いてきて、学習にも集中します。作文が読み合われるのでお互いのことを知り合えて、学級という集団が作られていきます。仲良くなっていくのです。それにもまして、書くことが好きになった子どもたちは、自分を見つめ、振り返り、考え、自己発見もし、自分の生きている今をひとまとまりの文章に書き上げることで、かけがえのない自己教育をするのです。

 その子どもたちの姿を見て、先生方は感動し、忙しくていっぱいしんどいことあるけど、がんばれるよなあと言われるのです。これこそ教育のロマンです。

 こんな教育が進んでいくと、先生方がとても仲良くなるのです。教師が働きやすい職場は子どもが生きやすい学校なのです。

 教頭先生は、先生方の授業を見られたら必ずうれしい感想を書いて担任の机の上に置かれるのです。校長先生は悩んでいる先生の話を聴き、見守ってくださいます。大会の参加者にも「みなさん、この会を成功させましょう」という熱い手紙をくださいました。「うちの先生と子どもたちを見てやってください」と誇らしげな校長でした。

 参加者の中から、こんな学校はどうしたら作れるのか学びたいという声がいくつも出ました。

 作文教育は、先生をも育ててくれたのです。

 「子どもとも親ともうまくいかず悩んで、藁をもつかむ気持ちで来ました。元気出ました」「月曜日、子どもに会うのが楽しみな気持ちになれ、来てよかったです」「大阪の先生方に元気もらいました」と他府県の参加者の声。大阪の先生はへこたれません。

(とさ・いくこ 和歌山大学講師・大阪大学講師)

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