東日本大地震・大津波と福島原発事故について
増田 善信
2.ヨウ素剤問題について
弱い放射能の問題で、最も重要な問題は放射性ヨウ素131とヨウ素剤の問題です。私はチェルノブイリへ3回も調査に行ったので、この問題を深刻に考えています。チェルノブイリでは、原発事故そのものを2日間も公表しなかった上、事故が起ってもヨウ素剤を飲ませなかった、特に子供に飲ませなかったので、多くの子供が甲状腺のがんになり、その後白血病の患者を多発させました。この教訓からIAEAでも原発事故の場合のヨウ素剤の使用を推薦しています。
ところが日本では、「原発は危険だ」という印象を与え、原発の推進に影響すると称して、日本政府も電力会社もその配布に反対し続けて、原発から20キロ圏だけにしか配布してきませんでした。
そこでここでは、酸性雨調査研究会の訴えを採録しておきます。
日本人は海草をたくさん食べるので、甲状腺に既に多くのヨウ素を貯めている人が比較的に多いが、乳幼児、特に乳児は、放射性ヨウ素の侵入に無防備です。ヨウ素剤を早めに飲ませて、放射性ヨウ素131の侵入を防ぐべきです。放射性ヨウ素131は半減期が8日ですから、放射性ヨウ素131が多くでたという情報があったら、直ぐ飲ませれば甲状腺がんや甲状腺疾患を防ぐことが出来ます。
何時飲ませるかは、放射能の拡散状況を勘案して、国や自治体で決めるべきですが、先ず前もって配布しておく必要があります。そのことを関東から以東の全自治体で要求させるべきだと思います。原発の周辺20キロ圏の人たちや、米軍などはヨウ素剤を服用しており、アメリカでは日本からの放射性粒子の飛来に備えて、ヨウ素剤が売り切れているそうです。
ところが、NHKなどは「ヨウ素剤を飲ませろなどと危機感をあおる人がいるが、ヨウ素剤は効果がない」とか、「副作用があるので却って害がある」などといっています。しかし、放射性ヨウ素131は甲状腺に吸収されやすく、甲状腺異常や甲状腺がんをつくりやすい元素です。もし前もって、ヨウ素剤を飲ませておけば、放射性ヨウ素131が来ても体内に蓄積されず、排出されてしまい、甲状腺の病気を引き起こす確率を下げられるのです。
ヨウ素剤は医師の監視下で飲ませるべきだという人がいますが、すでに、原発から半径20キロ圏の市町村には、各家庭、或いは保健所、医院や病院に配布してあり、自治体の指示で直ぐ飲むことになっています。
ヨウ素剤は錠剤で、1歳以上であれば大人も子供も1日2錠、1歳未満は1錠です。甲状腺、腎不全の人やヨウ素アレルギーが明らかな人、妊娠中の人、新生児は医師の指示に従って服用します。また、この程度の微量なヨウ素でも発疹や発熱など軽度の副作用を起こす人がいます。その場合は医師の指示を仰ぐ必要があります。
原子炉は今なお最悪の状態を脱し切れていません。ヨウ素剤の配布はこの1両日が勝負ではないかと思います。飲ませる時期は専門家の意見に従う必要があると思いますが、前もって配布しておくことが必要で、もし不要になってもそれは幸運だったということだと思います。
3.シーベルト
さて、放射線による被爆の問題でも混乱が起っています。シーベルト/時間とシーベルトの関係です。シーベルトとは、放射線が人体に与える影響の度合いを表す単位ですが、シーベルト/時間とシーベルトの関係は、速度と距離と同じです。亀でも長時間かければそこそこの距離を歩くように、弱い放射線でも長く曝されているとかなりな放射線を浴びることになり、かなりな影響があります。シーベルト/時間は瞬間的な放射線の強さであり、シーベルトは全体の積算された放射線の量です。健康にはこの積算された量が問題になるのです。
今度の福島第1の事故でも、2号機の正門付近で500mSv/h(ミリシーベルト/時間)という強い放射線を測定したと言われていますが、ここで2時間いると1000mSvになり、原発などの作業員は別として、一般の人はこれ以上の被曝は好ましくないと言う量になるのです。
一方、ほうれん草の放射線が、160μSv/h(マイクロシーベルト/時間)とすると、6250時間ほうれん草を食べ続けると、1000mSVにないます。そんなにほうれん草を食べ続ける人はいないと思いますが、しっかり洗って食べれば、ほとんど放射線を出すチリはなくなっていますから、ほとんど心配はないのです。
従ってここで、私たち酸性雨調査研究会が提案している、放射線を出すチリなどから身を守る方法を採録しておきます。ただし、主として東京を対象にしていますので、他の地域の人は風向きは、その地方で、放射線のチリの発生源になっている原発の方向からの風向きに直して適用してください。
<天候について>
・東京では、外出は出来るだけ風が南よりか、西よりの日を選ぶ。
特に雨天の日は、福島原発の方からの北よりの風の確率が高いため、雨模様の日は出来るだけ外出をさける
・雨にあたるのも避けたい。特に降り始めの雨は、汚染物質を含んでいるので、避ける努 力をする
<服装>
・外出時は、放射性のチリをすわないために、マスクを着用する
・髪の毛は放射性のチリが溜まりやすいので、外出時には出来るだけ帽子をかぶる
・放射性のチリを付着させないため、出来るだけ毛羽だった衣類は避け、平滑な布地の服を着る(ナイロン、レザーなど)
・さらに出来るだけビニール製の傘やレインコートを着て、帰宅したら戸外で脱ぎ、水道水で洗う。余りにも汚染されていると思ったら、処分するのも可
・雨天でない日でも、外出から帰ったら、先ず一番外側に着ていた上着やズボンなどを脱ぎ、洗濯機で水洗いする
・帰宅後は露出していた顔、手足を良く水洗いする。シャワーも有効
<食物・飲用水>
・野菜、特に葉野菜の洗浄は念入りに(桶にためた水に何回か水を替え漬け洗い、その後流水で流す)
・ゆで野菜は、必ずお湯でゆでてその湯は流し、電子レンジでの調理はさける
・出来るだけ水道水を飲み、井戸水や(東京ではないでしょうが)池や川の水は避ける
・水道水はろ過などの点で、最も汚染物質が除去されやすいと考える。