ジャックスの世界 / ジャックス (1968)
ジャックスを初めて聴いたのはまだ学生の頃かな。確か当時はまだオリジナル・アルバムは廃盤のままになっていて再発されていなかったはず。有名な「からっぽの世界」と「ラブ・ジェネレーション」だけ日本のロックを特集した「 Let the 70’s Die」という編集盤で聴いたのが初めてだった。再発されなかったのは歌詞に「唖(おし)」という禁止用語が入っていたからだという。
「からっぽの世界」 作詞・作曲 早川義夫
僕、唖(おし)になっちゃった
何も話すことできない
僕、寒くなんかないよ
君は空を飛んでるんだもの
僕、死にたくなんかない
ちっとも濡れてないもの
静かだな 海の底
静かだな 何もない
僕、涙枯れちゃった
頭の中がからっぽだよ
僕、甘えてるのかな
なんだか嘘をついているみたいだ
僕、死んじゃったのかな
誰が殺してくれたんだろうね
静かだな 海の底
静かだな 何もない
この世界観と詩に若造(当時の自分)はびっくり。こんなスゴイ歌詞の日本語ロックが60年代にあったんだとぶっ飛んだ。でも結局当時オリジナル・アルバムを聴くことは叶わず、再発されていることも知らないままに長い年月が過ぎ…。たまたまオークションで見つけて「あぁ、ジャックスか、昔ちょっとだけ聴いたナ…」という感じで手に入れたのがこのCD。
早川義夫のヴォーカルは決して上手くはないけれど、60年代末のアート・ロックやサイケデリック・ロックと呼ばれたジャンルを通過したバンドとしての方向性はしっかりと形作られている。全体的に音が暗いのは当時の世相(ベトナム戦争、学生運動など)もあったろうし、音楽界の流行もあったろう。ジャックスがドアーズ(The Doors)やヴェルベット・アンダーグラウンド(The Velvet Underground)に例えられるのはずっと後年の評価だとは思うが、今聴いてみてもやっぱり面白い日本語のロック。
この頃の日本のサイケデリック・ロックは意外と外国でも評価が高いそうで海外にはコレクターも居るらしい。フォークからロックへと移行していく様は英米ロックに追従しているようだが、(日本の)ロック黎明期にあってなかなか個性的なバンドが多く、見た目の先入観を除くと演奏もなかなかのもの。誰かのインタビューで当時の日本のギタリストはチョーキングさえ知っている人は少なかった、なんていう証言を読んだ記憶があるが、レコードを聴く限り英米の(当時)気鋭のバンドと比較しても演奏は意外なほど見劣りしないし、色々なアイデアもあって面白い。
ジャックスも当時はあまり売れなかったそうだが、後のミュージシャンでジャックスや早川義夫の影響を語る人は多かったと記憶する。初めて「からっぽの世界」を聴いた時の何ともいえないザワザワとした気分は今聴いても変わらなかった。次はこれも名盤と称えられる早川義夫のソロ作「かっこいいことはなんてかっこ悪いんだろう」を買ってみようかな。
オークションにて購入(¥480)
- CD (1998/3/18)
- Disc : 1
- Label : EMIミュージック・ジャパン