ハリーの「聴いて食べて呑んで」

日々増殖を続ける音源や、訪問した店、訪れた近代建築などの備忘録

全国芝居小屋錦秋特別公演2017 @岐阜県加茂郡白川町・東座

2017年11月05日 | 歌舞伎・文楽

歌舞伎「全国芝居小屋錦秋特別公演2017」 (11月4日 東座)

 中村屋が全国に散らばる芝居小屋を廻る「全国芝居小屋錦秋特別公演2017」。岐阜県で地歌舞伎が盛んなことは知っていたが、今回も8公演のうち3公演が岐阜県内(現在も県内に10を超える小屋が残っているそうだ)。そのうち加茂郡白川町の「東座」(舞台:明治22年・1889、客席:明治33年・1900・建造)で行われた公演に息子(嫁の代理)と2人で行ってきた。息子は初歌舞伎鑑賞。初めての歌舞伎が芝居小屋公演って凄いナ。

国道41号線を北上し白川町に入る。一部車がすれ違えない細い道もあり、こんな山奥に本当に芝居小屋が?と不安になるくらい。小屋に着くとすでに昼公演を観終えた人達が帰っていく途中。案内らしきものは無く、小屋まで来たが駐車場は無いとのこと。近くの小学校校庭まで引き返し、シャトルバスで小屋に戻る。地元の人が運営しているので行き渡らないことも多いが、手作り感が溢れてこれはこれで楽しい。こんな小さな小屋で中村屋を観られるんだもの、気分が上がる。

 

バスが会場に到着。場外で助六寿司とお茶を購入して小屋の中へ。靴を脱いでビニール袋に入れて持ち、中に入るとすでに1階正面はほぼ満席。それにしても数多くの提灯がぶら下がり、舞台はすぐ目の前という感じ。大きな梁がむき出しの会場は何とも素晴らしい空間。収容人数は600人らしいが、客席の誰の顔も判別出来るくらいの空間なので、まさに”小屋”といった感じ。

どこで観ても不満はなさそうなので2階上手の桟敷席へ進む。桟敷には2列座布団が敷かれているがほぼ埋まっているようだったので、そのすぐ後ろの板が渡してあるところに腰かける(ちょっとお尻が痛いが)。煤けて年季が入った大きな東座の看板が見える。自分の席から客席を見渡すとこんな感じ(写真下)。舞台も花道のある下手側も近い近い。目の前には太い梁があり、造作を含めて何とも言えない、いい雰囲気。場内アナウンスも地元のおばちゃんだがたどたどしくて可笑しい。

 

まずは「歌舞伎塾」と題して、勘九郎、七之助、それに司会の澤村國久、地元恵那市出身のいてう(いちょう)が登場し、楽屋入りから女形の化粧が完成するまでを仲弥をモデルに見せたり、舞台での太鼓による効果音を再現したりと楽しくおしゃべり。勘九郎が仲弥を”タイ人の交換留学生”(笑)と紹介していたが、周りの人は「へぇー」と感心していた。オイ、信じてる人いるんじゃないか?(苦笑)。客席との交流もあり、和やかな雰囲気で進む。息子にはちょうどいいイントロだった。

そして松羽目もの「棒しばり」。勘九郎はもちろん、若い鶴松の太郎冠者も小気味よい演技で楽しい。息子も声を上げて笑っていた。分かり易く楽しい演目だが、諸手が不自由な踊りはかなり厳しそう。歌舞伎役者ってすごいなァ。歌舞伎座を含む大きな会場の前列よりも距離感は近いので、本当に目の前で踊っている感じ。

休憩の後は七之助の「藤娘」。真っ暗闇の会場にパッと明かりが点くと、もう会場中ため息しか出ない美しさ。実は嫁が七之助の藤娘をとても楽しみにしていたのだが、用事が出来て代わりに息子が観劇したのだ。この美しさを通常の会場とは全然違う距離感で見せてやりたかった…。藤娘が踊りだしてすぐ、田舎の会場らしくなぜか場内に鳥だかコウモリだかが飛んでいて、ざわつく(苦笑)。途中着物の早変わりがあり、その度に会場を埋めるため息、ため息。男でも惚れるわ、あれは…。あまりにも美しい舞いが終わる。名残惜しいがこれで幕。とても素晴らしい空間だった。

 東座下足札(お土産)

 

一、歌舞伎塾

中村勘九郎
中村七之助

 

二、棒しばり(ぼうしばり)

次郎冠者:中村勘九郎
太郎冠者:中村鶴松
曽根松兵衛:中村小三郎

 

三、藤娘(ふじむすめ)

藤の精:中村七之助

 

( 地芝居 地歌舞伎 黒川東座 あずま座 芝居小屋 )


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