
ーしあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイスーMAUDIE
2016年 カナダ、アイルランド 116分
監督=アシュリング・ウォルシュ キャスト=サリー・ホーキンス (モード・ルイス) イーサン・ホーク (エベレット・ルイス) カリ・マチェット (サンドラ) ガブリエル・ローズ (アイダ)
【解説】
美しい風景や動物たちを描いた素朴な作風で知られるカナダの画家モード・ルイスの伝記ドラマ。絵と自由を愛したモードの人生を、彼女を支え続けた夫との関係を軸に描き出す。モードを『ハッピー・ゴー・ラッキー』などのサリー・ホーキンス、夫を『6才のボクが、大人になるまで。』などのイーサン・ホークが演じる。ドラマ「刑事ヴァランダー2 白夜の戦慄」などのアシュリング・ウォルシュがメガホンを取った。(シネマトゥデイ)
【あらすじ】
カナダ東部の田舎町で叔母と暮らし、絵を描くことが生きがいのモード(サリー・ホーキンス)は、魚の行商をしているエベレット(イーサン・ホーク)の家で住み込みの家政婦として働き始める。幼少期にリウマチを患い身内に冷たくされてきたモードと、養護施設で育ったエベレットは互いを認め合い、やがて夫婦になる。ある日、モードの絵の才能を見いだす女性が現われ……。(シネマトゥデイ)
【感想】
実在の画家、モード・ルイスの半生を描いています。
モード(サリー・ホーキンス)はその障害のほとんどを、カナダのノバスコシア州の片田舎の小さな家で暮らしていました。
幼い時にリウマチを患って、手足が不自由だったモード。
両親が亡くなった時に、兄が生家を相続するが、借金に苦しむ兄はその家を売ってしまい、モードは叔母アイダ(ガブリエル・ローズ)の家に預けられる。
世間の目と、それを気にする叔母の厳しい態度に耐えられず、モードは自立しようと考えた。
食料品店で見つけた「家政婦募集」の張り紙を持って、広告主のエヴェレット・ルイスを訪ねる。
エヴェレット
エヴェレットは孤児院育ちで貧しく無口で気難しい。
廃材を集めて売ったり、魚の行商をしたりしていた。
モードの姿を見て、雇うのをためらうが、モードは帰るところもなく、不自由な手足でエヴェットの気にいるようにと家事に取り組む。
「自分が主人で、お前は犬と鶏の下だ」と言われるし、ベッドは一つしかなくエヴェレットと雑魚寝。
叔母からは「エヴェレットの慰み者」と言われる始末。
ノバスコシア州は夏は暑く、冬は厳しい。
家事の合間を縫って、モードは棚や壁にペンキで独特な絵を描き始める。
それは、小さな窓から見える自然豊かな四季折々の風景。
その中で息づく鳥、花、動物、小さな家、農夫の姿など。
自己流だけど、色彩豊かに、人の心を揺るがす絵だった。
エヴェットと一緒に魚の配達に行った時に、客に渡す控えのカードに絵を描いたら、そのカードを買いたいという人が現れた。
エヴェットから魚を買っていたニューヨークから来たサンドラ(カリ・マチェット)は、モードの絵を気に入り、絵を売ってくれと言い出した。
やがて、家で作品を売るようになり、取材が来て、ニクソン副大統領も買い上げて、モードの名前はどんどん有名になっていく。
モードは絵ばかり描いて、エヴェットは家事もするようにと、立場も違ってくる。
☆ネタバレ
モードが貧しい中から有名な画家になっていくというサクセスストーリーの裏に、もう一つのエピソードがありました。
モードが若い時に赤ちゃんを産んでいて、その赤ちゃんは障害があったために、モードが眠っている間に亡くなってしまい、兄と叔母で埋めたと聞かされていた。
モードが画家で成功してから、年老いた叔母が「あの子は兄が裕福な夫婦に売った」と告白する。
その娘をエヴェレットが探して、モードを遠目から会わせるシーンがありました。
幸せそうな娘に満足するモード。
二人の絆を感じるシーンでした。
映画の中では、終始無愛想で気難しいエヴェレットですが、エンドロールに登場するご本人のエヴェットさんは、とても優しそうな好好爺で、微笑ましかったです。
モードさんも、ニコニコされていて素敵なご夫婦だなあと思いました。
たまたま同居したから夫婦になったなんて生やさしいお二人ではないということが、映画全体を通して考えさせられました。
この人たちこそ、魂の絆、お互いがお互いを必要とされていて、唯一無二のご関係なんだと思いました。
モードの余計な一言でエヴェットが怒り、モードを力一杯打つシーンから、私は泣きっぱなしでした。
打たれてひるむモードでもない。
あんなに小さくてひ弱なモードさんの体の中が、あの絵に描かれる愛ある世界で満たされていると思うと、感動で涙が溢れてきます。
エンドロールにはモードさんの絵がどんどん出てきますが、どれもこれも思わずにっこりしてしまうようなかわいく暖かいものばかりでした。
みなさんにオススメです。
モードさんの愛の力を感じて欲しいです。