ーマリーゴールド・ホテルで会いましょうーTHE BEST EXOTIC MARIGOLD HOTEL
2011年 イギリス/アメリカ/アラブ首長国連邦
ジョン・マッデン監督 ジュディ・デンチ(イヴリン)ビル・ナイ(ダグラス)ペネロープ・ウィルトン(ジーン)デヴ・パテル(ソニー・カプー)セリア・イムリー(マッジ)ロナルド・ピックアップ(ノーマン)トム・ウィルキンソン(グレアム)マギー・スミス(ミュリエル)
【解説】
『恋におちたシェイクスピア』のジョン・マッデン監督が、ジュディ・デンチら実力派ベテラン俳優陣を迎えた群像コメディー。人生の終盤を迎えそれぞれに事情を抱える男女7人が、快適な老後を送るため移住したインドで織り成す人間模様を描く。出演は、ジュディのほかにビル・ナイ、マギー・スミス、トム・ウィルキンソンら。豪華リゾートホテルのはずがぼろホテルだったなど、想定外の事態に戸惑いながらも、前向きにセカンドライフを謳歌(おうか)しようとする7人の姿が涙と笑いを誘う。
【あらすじ】
「マリーゴールド・ホテルで、穏やかで心地良い日々を-」という宣伝に魅力を感じ、イギリスからインドに移住してきたシニア世代の男女7人。夫を亡くしたイヴリン(ジュディ・デンチ)をはじめ、それぞれに事情を抱える彼らを待ち受けていたのは、おんぼろホテルと異文化の洗礼だった。そんな周りの様子を尻目にイヴリンは、街に繰り出しほどなく仕事を見つけ……。(シネマトゥデイ)
【感想】
海外で老後を送ろうと考えている人も多いと思います。
まして、イギリス人は英語圏ならコミュニケーションに不自由がないわけですから、インドでの余生に飛びつく心理もわかります。
イギリス本国では、自分の持っているお金では老後の資金が不安、という人も、物価の安いインドでなら、優雅な老後が送れそう。
「マリーゴールド・ホテルで、穏やかで心地良い日々を-」という宣伝文句に乗せられて、イギリスから男女7名のお客がジャイプールにやってきました。
イブリン(ジュディ・デンチ)。
夫に依存して何不自由に暮していた彼女は、夫の死後、多額の借金があることに驚かされる。
夫の死後にわき起こった夫への不信感で、目の前が真っ暗になる。
息子は一緒に住もうと言ってくれたが、家を売って、インドで老後を過ごすことを決心する。
イブリン
ダグラス(ビル・ナイ)とジーン(ペネロープ・ウィルトン)夫妻。
娘がIT分野で起業したため、退職金を出資したので老後の資金がなくなってしまった。
いまなら、安物の老人向け住宅しか買えない。
不服ばかりいう妻のジーン。
少しでも豊かな老後をと、インドにやって来た。
マッジ(セリア・イムリー)。
何度も離婚結婚を繰り返す人生だが、未だに生涯のパートナーに出会えない思いがある。
息子の家で孫たちの子守りをしていたが、急に思い立って、インドでお金持ちのパートナーをみつけ新しい人生を始めようと思う。
ノーマン(ロナルド・ピックアップ)。
彼も永遠の青年でいたい。
ステキな恋人と出会いたいと考えているが、イギリスでは相手にされないので、インドへやって来た。
ミュリエル(マギー・スミス)
大腿骨の手術をしなければならないが、半年待ちだし、そのあとのリハビリも入れて費用がかかりすぎるので、インドで手術を受け、療養することにした。
イギリス人至上主義で、人種偏見がきつい。
ミュリエル
グレアム(トム・ウィルキンソン)。
突然判事を辞め、かつて住んでいたこの土地にやって来た。
どうしてもあいたい人がいたが、まだ迷いはあった。
☆ネタバレ
7人がついたのは、豪華ホテルとはほど遠い、改修中のボロホテル。
電話はないし、ドアのない部屋もあるありさま。
支配人のソニー(デヴ・パテル)は父親から譲り受けたこのホテルを、なんとか一流のホテルにしたいという夢だけは立派に持っていた。
「話が違う」と詰め寄るお客に、「将来像を載せてみました」と明るく言い放ちます。
イブリンは、この現実を受け入れ、ブログを始め、ジャイプールの町に飛び込んでいった。
求人案内を片手に飛び込んだ会社では、アドバイザーとして雇ってもらった。
そこには、ソニーの恋人が勤めていた。
ダグラスは、ジャイプールの町のお寺や史跡などを訪ねて歩いていたが、妻のジーンは町の猥雑さになじめず、部屋に閉じこもってばかりいた。
グレアムは、黙々と人探しをしていた。
青春時代、愛したインド人の男。
使用人の息子で、ちょっとした事件のときに自分がゲイということがバレるのを恐れ、彼をかばうことができなかった。
それが、生涯の汚点となり、いまも彼を苦しめていた。
会いたい。でも、会うのが怖い。
彼は自分を許してくれるだろうか。
その葛藤に揺れながら、彼の行方を探し続けていた。
ある日、グレアムに興味を持ったジーンが跡を付けた。
グレアムの告白を聞いたジーンは、ますますここにいるのがイヤになった。
反対に、イブリンとダグラスはグレアムを理解し、とうとう見つかったその人を訪ねるグレアムに同行した。
その人は、結婚して家庭を持っていた。
そして、妻もその事実を知りながら、グレアムを温かく受け入れてくれた。
そして、グレアムはホテルに戻り、生涯の重荷を下ろしたかのように天に召された。
インド式のお葬式をして、みんなで見送った。
イブリンとダグラスが親密なところをジーンが見てしまった。
そこへ、ダグラスの娘から事業が成功したのでお金を返すと言う知らせが来た。
夫妻は、イギリスへ帰ることになった。
ミュリエルは、手術に成功して、ひとりでホテルに入ることが多かった。
食事を世話してくれているカーストの身分の低い女性が、ある日、自宅に招いてくれた。
ただでさえ人種偏見の強いミュリエル。
彼女の家族の前でも緊張して、車椅子で遊ぶ子供たちに「泥棒!」と叫んでしまった。
事実が分かり、懸命に謝るミュリエル。
後日、その女性に心から謝り、自分の体験を語り出した。
お金持ちのメイドを長年やってきたミュリエル。
自分では家族同然と思っていた。
そして、助手として入って来た娘に、自分の知識と技術を惜しみなく伝えた。
主人は、その助手が十分役に立ちことを知り、ミュリエルに暇を出したのだ。
誰かに自分の気持ちを伝えることで、気持ちが切り替わったミュリエルは、ホテルの帳簿をチェックし始めた。
ソニーは頑張っていたが、なかなか融資をしてもらえるところまでは行かなかった。
ソニーの母が乗り出して来て、このホテルは処分すると言い出した。
しかも、町で働く恋人のことも母は認めず、身分のあった人とお見合いさせると言う。
ダグラスも去り、ホテルも閉められてしまったら、どうすればいいのか途方に暮れるイブリン。
ところが事態は、思いもかけない結末へと向かっていきます。
個性豊かな名優たちが織りなす群像劇。
そこには化学反応がうまいぐあいに起きていきます。
配役の妙です。
ミュリエルが突然立ち上がり、歩けるのを見せるところなんて、笑えます。
老人たちの奮闘に、若い恋人たちがうまく絡んで、決して老いの棲み家的なお話で終わっていません。
ラストは少しばたばたしますが、終わってみればハッピーエンド。
ラスト、ソニーと恋人がバイクで走っていると、ダグラスとイブリンもバイクに二人乗りしてすれ違います。
すれ違いざまに手を上げるダグラスとイブリン。
本当に、ジャイプールの町にとけ込んでいて、いくつになっても人生は始められるんだと、希望に満ちたラストでした。
よかったですよ。