マダムようの映画日記

毎日せっせと映画を見ているので、日記形式で記録していきたいと思います。ネタバレありです。コメントは事前承認が必要です。

再会の食卓

2011-08-23 10:10:35 | 映画ーDVD

 

ー再会の食卓ーAPART TOGETHER

2010年 中国

ワン・チュアンアン監督 リサ・ルー(ユィアー(玉娥))リン・フォン(リゥ・イェンション(劉燕生))シュー・ツァイゲン(ルー・シャンミン(陸善民))モニカ・モー(ナナ(娜娜))

 

【解説】

中国と台湾の歴史に翻弄(ほんろう)された元夫婦の悲喜こもごもを描き、家族とはどうあるべきかを問い掛ける人間ドラマ。40数年前に妻と離ればなれになった台湾の老兵が、上海に新しい家族を持つ妻の元を訪ねたことから、家族それぞれの思いが浮き彫りになっていく様子を映し出す。監督は、『トゥヤーの結婚』で国際的な名声を得たワン・チュアンアン。第60回ベルリン国際映画祭の最優秀脚本賞にあたる銀熊賞を受賞した、深みのあるストーリーに感じ入る。

 

【あらすじ】

40数年ぶりに台湾から上海に戻ってきたイェンション(リン・フェン)だったが、生き別れた妻ユィアー(リサ・ルー)には別の家庭があった。「台湾で一緒に暮らしたい」というイェンションの申し出に、心を揺り動かされるユィアー。家族たちがさまざまな反応を見せる中、ユィアーはある決断をする。(シネマトゥデイ)

 

【感想】

とてもいい作品でした。

 

年輩の3人の登場人物が、何度か食卓を囲むのですが、そのシーンで泣けました。

3人3様のその食卓への思いが、重層的に伝わってきました。

同じ時代を生き抜いてきた人たちだけがわかる、深い感情がよく現れていると思いました。

登場人物たちが泣いてないのに、見ている私が泣いた作品は初めてです。

 

上海に住むユィアー(リサ・ルー)の元に、手紙が届いた。

 

1949年、中国の内戦で、共産党に敗れた国民党の兵士たちが台湾へ落ち延びた。

国民党の兵士だったイェンション(リン・フェン)の妻・ユィアーは妊娠していたのに、上海に取り残され、夫と生き別れてしまう。

 

子供を抱え、国民党の家族として差別され、困りきっていたところを、共産党兵士だったルー・シャンミン(シュー・ツァイゲン)に救われた。

二人はその後40数年に渡り夫婦として暮らし、二人の娘ももうけ、今では二人の孫にも恵まれて、成長著しい上海で平穏に暮らしていた。

 

そこに突然イェンションからの手紙。

中国と台湾の交流が許される時代となり、生き別れた家族が会える事業が始まっていた。

イェンションは、台湾で新しい妻をめとり、一人息子ができ、その息子は商才に長け事業が成功したのだが、若くして死んでしまった。

妻も死に、ひとりぼっちになったイェンションは、故郷を懐かしみ、ユィアーに会いたいというのだった。

 

ユィアーの現在の夫ルーは、大歓迎だと言ってくれたが、イェンションとの間にできた長男は、父に捨てられた傷を抱え、結婚もしないでいた。

長女も、反対。

家庭を持っている次女とその娘ナナ(モニカ・モー)は協力的だった。

 

それでも、家族はイェンションにご馳走を作って歓待し、その夜は自宅に泊めた。

 

ナナとユィアーを伴って、上海見物出かけたイェンション。

近々、ユィアー一家が越して来ると言うマンションの建設現場にも立ち寄った。

そこで、イェンションは「一緒に台湾へ行って欲しい」とユィアーに今回の旅の目的を打ち明けた。

ユィアーも若い頃の情熱が蘇り、一緒に暮らしたいと言う気持ちが抑えられない。

 

でも、どうやってルーに言い出す?

 

☆ネタバレ

二人はかなり躊躇するが、ルーに言うと、「そういうだろうと思っていた。気持ちよくユィアーを送り出すよ」と言う。

そして、家族会議が始まったのだが、長男は無関心、長女は大反対。

それでも、ルーはユィアーをイェンションに返そうとする。

 

ルーはユィアーと離婚しようとするのですが、そもそも二人は戦争のごたごたで結婚していなかったので、離婚できないと言われ、まず結婚することにします。

 

中国式の結婚の申請は、二人で写真を撮って役所に提出するのですね。

二人で写真を撮っていると、連れ添った年月が蘇り、心にさざ波が立ちます。

首尾よく結婚して、離婚届を出そうとしたら、今度は財産証明書がいるといわれ、その日の離婚はできなくなりました。

 

時間がたてば、ユィアーの情熱も薄れて来るし、ルーの方も未練が募ったようで、普段飲まないお酒を飲んで、普段は食べないご馳走を食べて、とうとうルーは脳梗塞で倒れてしまいました。

 

それでもルーは、ユィアーを連れて帰るようにイェンションに言うのですが、ユィアーには病気のルーを置いて台湾へ行く気持ちになれません。

 

ユィアーはイェンションを港まで見送り、辛い別れとなります。

 

それから1年後、ユィアーは車椅子生活のルーと上海の高層マンションに住んでいます。

家族のためにご馳走を作っていますが、長男も娘たちも急用で来れないと連絡が入り、ナナと3人の食卓となりました。

 

「昔は狭い家でもみんなが集まり食卓を囲んだものだったのに、広くなった今は、みんな来られないなんて…」とユィアーがつぶやきました。

 

見所は、3人が食卓を囲み、恋の歌を歌うシーンです。

戦争によって、失われた青春や幸せ。

3人のそれぞれの心情が伝わってきます。

3人は笑っているのに、私は泣けて泣けて…。

不思議な感情でした。

 

「再会の食卓」というのは邦題ですが、この作品にはおいしそうなお料理がたくさん出てきます。

湯気も立っていて、香りまで漂ってきそうでした。

ルーは普段は倹約家なのにイェンションには高級食材を振る舞って「もっと食べろ」と薦めます。

このあたりに、出世を諦めてでも、子供を抱えて困っていたユィアーと共に生きてきた彼の人間性を感じました。

人を想うって、本当に美しい感情ですね。

 

ユィアー役のリサ・ルーさん、「ラストエンペラー」で西太后を演じた人で、アメリカで活躍されている女優さんです。

 

見ているうちに、亡くなった姑に似ているなあと思い、夫にも聞いたら「本当に似ているね」と言っていました。

80歳くらいのようですが、美しかったです。