ーモールスーLET ME IN
2010年 アメリカ
マット・リーヴス監督 コディ・スミット=マクフィー(オーウェン)クロエ・グレース・モレッツ(アビー)イライアス・コティーズ(警官)リチャード・ジェンキンス(父親)
【解説】
『クローバーフィールド/HAKAISHA』の俊英マット・リーヴス監督が作り上げた、スウェーデン映画『ぼくのエリ 200歳の少女』のハリウッド版。孤独な少年と少女の切なくも美しいイノセントな恋の物語が、町を震撼(しんかん)させる連続猟奇殺人事件のミステリーと絡み合う。主演は『キック・アス』のクロエ・モレッツ。ホラーの帝王スティーヴン・キングが、「2010年のお気に入り映画ナンバーワン」に選んだことも話題に。
【あらすじ】
学校でのいじめに悩む孤独な12歳の少年オーウェン(コディ・スミット=マクフィー)。ある日、隣に引っ越してきた少女アビー(クロエ・モレッツ)と知り合ったオーウェンは、自分と同じように孤独を抱えるアビーのミステリアスな魅力に惹(ひ)かれ始める。やがて町では残酷な連続猟奇殺人が起こり……。(シネマトゥデイ)
【感想】
「ぼくのエリ 200歳の少女」2008年のスウェーデン映画のハリウッドリメイクです。
「キック・アス」のヒットガール、クロエ・グレース・モレッツが、ヴァンパイアを演じています。
場所はアメリカの豪雪地帯、主人公たちの名前も変わっていますが、ストーリーはほとんど同じでした。
さらにホラー色が強くなっていましたが、オリジナル作品に比べると詩的な感じは無くなっていました。
だから、良くないと言う訳ではなく、同じストーリーなのに、作る人が変わると、こんなに違うのかーと不思議な気分で見終わりました。
最初のシーンがいいですね。
雪景色の景色の遠景、俯瞰。
一本の道が延びている。
静寂を破るけたたましいサイレンの音。
スクリーンの奥の方から手前に、パトカーに先導された救急車が走って来る。
中では、わざとフォーカスを合わせない患者が苦しんでいる。
この人はアビー(クロエ・グレース・モレッツ)の「父親」(リチャード・ジェンキンス)。
病院で処置を受け、刑事が電話で呼び出されている間に、病室の窓から落ちて死んだ。
話は2週間前に遡る。
オーウェン(コディ・スミット=マクフィー)は12歳の少年。
母と二人暮らし。
母と父は離婚に向かって話し合い中。
学校では、いじめっこにいじめられている。
晩ご飯の後は、隣の家をのぞき見たり、いじめられた憂さを木や鏡に向かって晴らしている小心で孤独な少年。
ある日、隣に父親と思われる男と少女が引っ越してきた。
少女は雪道を裸足で歩いていた。
オーウェンが団地の公園で木に向かって憂さばらしをしていると、うしろのジャングルジムの上に、うずくまったアビーがいた。
「友達にはなれないよ」というアビーの顔は蒼白だった。
次の朝、学校へ行くと殺人事件の話で持ち切りだった。
その殺人はアビーの「父親」の仕業だった。
人の血が欲しかったのに、失敗していた。
その夜もアビーと会った。
ルービックキューブに興味を示したアビーに、オーウェンはそれを貸してあげた。
オーウェンと別れた後、アビーは近所の人を襲って殺した。
死体は「父親」が凍った川に流した。
☆ネタバレ
アビーはヴァンパイアです。
人間の血を飲まないと生きてはいけません。
その保護者である「父親」はすでに疲れ果てていて、アビーのために血を供給することが難しくなってきているようでした。
そしてとうとう、失敗して事故を起こしてしまいます。
自ら硫酸をかぶり身元をわからなくして運び込まれたところが、冒頭のシーンでした。
病院に来たアビーに自らの血を与え、転落死します。
そのあと、アビーはオーウェンを訪ね、オーウェンは付き合ってくれるように頼みますが、アビーは自分は女の子ではないと繰り返します。
アビーが何でもかまわない、とオーウェンが言ました。
事件を調べている刑事がアビーの家にやってきて、風呂場で眠っているアビーを発見しました。
オーウェンは、陽の光を浴びると死んでしまうアビーを助け、アビーの正体を知っても、アビーとキスをかわします。
オーウェンのファーストキッスは血の味でした。
オリジナルでは、アビーが保護者を求め、隣の少年を選んだ形に見えましたが、この作品では、あくまでボーイ・ミーツ・ガールのロマンスの形になっていました。
アビーが「私を入れてくれる?」と聞くシーンが何度か繰り返されます。
最初は言葉通り、部屋に入ってもいい?と言うことですが、最後は、「私を受け入れて欲しい」という意味に変わり、オーウェンは受け入れるのです。
それが原題の「LET ME IN」。
わかりやすいですよね。
このへんのクロエちゃんの演技がすごいです。
血だらけのクロエちゃん。
よく頑張ったと思います。
「ザ・ロード」のコディ・スミット=マクフィーも負けていません。
弱々しく、孤独の中で必死に耐えている少年を好演しています。
もうこれだけで胸キュンになるはずですが、オリジナルを見てあの雰囲気に魅かれている私には、なんか物足りない感じなんです。
オーウェンを取り巻く、寒さ、荒涼さ、愛への飢餓感が足りないと思ってしまったのです。
オリジナル作品が恋しいと思いました。
オリジナルを見ていない人は、この作品で十分満足できると思います。
アビーを思いながらも別れたオーウェン。
でも、窮地に追い込まれたとき、アビーはオーウェンを救い、二人は運命共同体となったのです。
この作品を見たに人は、オリジナルを見て欲しいと思います。
この二人の絆は、とても未熟で力もなく、将来が見えません。
でも、二人はとても満足していて幸せなのです。
とても脆くて危うい感じで、それがオリジナルのラストシーンの魅力となっています。
ハリウッドリメイクには余韻が足りない感じでした。