ー大鹿村騒動記ー
2011年 日本
監督=阪本順治 キャスト=原田芳雄(風祭善)大楠道代(風祭貴子)岸部一徳(能村治)松たか子(織井美江)佐藤浩市(越田一平)冨浦智嗣(大地雷音)瑛太(柴山寛治)石橋蓮司(重田権三)小野武彦(山谷一夫)小倉一郎(柴山満)でんでん(浅川玄一郎)加藤虎ノ介(平岡健太)三國連太郎(津田義一)
【解説】長野県の山村に300年以上も伝わる「大鹿歌舞伎」をモチーフに、『亡国のイージス』『顔』の阪本順治監督と原田芳雄がタッグを組んだ群像喜劇。伝統の村歌舞伎が受け継がれてきた山村で食堂を営む男のもとに、18年前に駆け落ちした妻と友人が現れたことから始まる騒動を軽妙なタッチで描く。共演には大楠道代、岸部一徳、松たか子、佐藤浩市、三國連太郎ら実力派がそろい、悲喜こもごもの人間模様を彩る。大鹿歌舞伎の舞台を再現したクライマックスは圧巻。
【あらすじ】
南アルプスのふもとにある長野県大鹿村でシカ料理店を営む風祭善(原田芳雄)は、300年以上の歴史を持つ村歌舞伎の花形役者。公演を間近に控えたある日、18年前に駆け落ちした妻・貴子(大楠道代)と幼なじみの治(岸部一徳)が現れる。脳に疾患を抱え記憶を失いつつある貴子をいきなり返され戸惑う善だったが……。(シネマトゥデイ)
【感想】
この話は、実在する大鹿歌舞伎を題材に原田芳雄さんを主役に作られた作品です。
映画公開日の3日後の7月19日に、原田さんは他界されました。
お披露目試写会に車椅子で舞台挨拶をされている姿をテレビで見ました。
痩せておられて、お声も出ず、すごく痛々しかったです。
この撮影のときも、体調は悪かったようです。
でも、スクリーンの中の原田さんはお元気そのものでした。
大鹿歌舞伎は、長野県伊那郡大鹿村に300年に渡り上演されてきた芝居だそうです。
今回取り上げられている大鹿歌舞伎の外題「六千両後日之文章重忠館の段」は大鹿村歌舞伎のオリジナルだそうです。
すごいですね。
大鹿村歌舞伎の本番の日が近づき、役者たちは稽古に励んでいた。
しかし、この村をリニアモーター新幹線が通ると言う計画が持ち上がり、役者たちの間にも推進派と反対派があり、亀裂が生じていた。
この村で「ディアイーター」という鹿肉専門食堂を経営している風祭善(原田芳雄)は、歌舞伎の中心人物景清を演じる。
そこへ、18年前に駆け落ちした善の妻孝子と幼なじみの治がふいに現れる。
治は「貴子が認知症で面倒を見られないから、返す」という。
貴子は、何事もなかったかのように、家に上がり込み、布団を善の分まで敷いていた。
二人を家に泊めた善は、その後も貴子の面倒を見る。
料理の仕方も忘れてしまった貴子。
万引きまでしてしまう始末。
でも、二人のなれそめである、歌舞伎のセリフは覚えていた。
台風で貴子は昔の記憶を取り戻し、自殺しようと家を出る。
善は引き止める。
折しも、崖崩れにあい、一平(佐藤浩市)が負傷、その代役を貴子が勤めることになった。
そして、大歌舞伎が行われた。
妻が幼なじみと駆け落ちして失踪する、なんて、本当に悲劇的なことだけど、18年もたってしまったら、こういう喜劇になってしまうのだろうなあと思いました。
そして、自分の近くに戻って来たら、懐かしさに、恨みも忘れてしまうかもしれない。
人間の心理って、不思議なものです。
もちろん、何年経っても許せない人もいるでしょう。
でも、許しても許さなくても、人生の長さは変わらない。
としたら、罪悪感を抱えて生きながらえてきた人たちを前に、受け入れざるをえないんじゃないかな?
貴子の父である三国連太郎さんが、ジベリアで亡くなった戦友たちを木彫して悼む姿が対照的に感じられました。
生きてこそ、だものね。
伝統の村歌舞伎と、人生の夕暮れに訪れた喜劇にとてもよく似た悲劇、または、その逆かな?
「一度目は悲劇、二度目は喜劇」と言っていましたから。
とても面白い作品でした。