マダムようの映画日記

毎日せっせと映画を見ているので、日記形式で記録していきたいと思います。ネタバレありです。コメントは事前承認が必要です。

フロスト×ニクソン

2009-04-03 11:07:37 | 映画ー劇場鑑賞
ーフロスト×ニクソンーFROST/NIXON
2008年 アメリカ
ロン・ハワード監督
フランク・ランジェラ(リチャード・ニクソン)マイケル・シーン(デビッド・フロスト)ケヴィン・ベーコン(ジャック・ブレナン)レベッカ・ホール(キャロライン・クッシング)トビー・ジョーンズ(スイフティー・リザール)マシュー・マクファディン(ジョン・バード)オリヴァー・プラット(ボブ・ゼルニック)サム・ロックウェル(ジェームズ・レストン)

【解説】
今や伝説となったインタビュー番組の司会者デビッド・フロストと、ウォーターゲート事件で有名な元大統領リチャード・ニクソンのトークバトルを中心に、番組の裏側で繰り広げられたドラマに迫る話題作。監督は『ダ・ヴィンチ・コード』のロン・ハワード。フロストを『クィーン』のマイケル・シーン、ニクソンを『グッドナイト&グッドラック』のフランク・ランジェラが演じる。実力派俳優たちによる、ダイナミックな“心理戦エンターテインメント”として楽しめる。(シネマトゥデイ)

【あらすじ】
1974年8月9日、第37代アメリカ合衆国大統領リチャード・ニクソン(フランク・ランジェラ)が、ウォーターゲート事件の汚名にまみれて辞職。その光景をテレビで見ていたトーク番組の人気司会者デビッド・フロスト(マイケル・シーン)は、ニクソンに対する単独インタビューを企画。ニクソンの代理人にコンタクトを取る。(シネマトゥデイ)

【感想】
★ウォーターゲート事件
「全国委員会オフィスへの不法侵入・盗聴事件、いわゆるウォーターゲート事件である。事件調査の過程でニクソン本人がこの盗聴に関わっていたことが明らかになったため、1974年8月8日夜に行われたテレビ演説で辞意を表明した。
その後ニクソンは、事件の責任をとる形で1974年8月9日に正式に辞任した。なお、任期中の大統領の辞任はアメリカ史上初めてのことであり、その後も任期中に辞任した大統領は現れていない。なお、後任のジェラルド・R・フォード大統領はウォーターゲート事件の調査が終了した後、同年9月8日にニクソンに対する特別恩赦を行った。結局、自ら辞職したことでニクソンは現実に弾劾されなかったし有罪と判決されもしなかったが、恩赦の受理は実質的に有罪を意味した。」ウィキペディアより

「TVは将来、ニュースとスポーツだけになる」とずいぶん前に聞きました。
今回の番組編成をみていても、そんな気配も感じられます。
でも、この作品を見たら、日本ではこういうことは起こりえないだろうなあ、と寂しい気持ちになりました。

自分のすべてをかけて、大物に挑むーそんな気概のあるキャスターが見当たりません。
安部さんや福田さんに辞任の本当の理由や責任問題に斬り込むジャーナリストはいないものか?
小沢さんのこともマスコミは迷走しているみたいに見えるし、テポドンのことも。
日本のマスコミ、もっとしっかりして欲しい!!

さて、この作品。
ニクソン(フランク・ランジェラ)が「ウォーターゲート事件」で失脚して、そのインタビューを企画するフロスト(マイケル・シーン)は、ロンドンのコメディアン出身の司会者。
人気はあるもののジャーナリストとしては、評価されていない人物。
彼もまた、世に出るきっかけを模索していた。
ニクソン大統領辞任の会見を見て、その視聴率に驚き、単独インタビューを企画する。

☆ネタバレ
一方のニクソン氏は余裕。
どうせ、この企画はスポンサーがつかなくて潰れるだろうと予測していた。
多額の出演料をふっかけ、よしんば企画が現実になっても、フロスト相手ならちょろい、追求をかわし、うまくいけば、汚名を挽回し、政界へ復帰の道もあると考えていた。
「ウォーターゲート事件」ばかりが取り上げられ、自分の功績が評価されないことへの苛立もあった。
人気のない自分へのコンプレックスや、人気者へのねたみもあった。

この辺のニクソンの性格の際立たせ方がすごくうまいと思いました。

フロストは、ニクソン側の予想通り、3代ネットワークからも断られ、大口スポンサーもみつからないまま、自主制作に切り替えて始動した。
ブレーンも雇い、準備期間を経て、なんとか単独インタビュー初日を迎えることが出来たが、問題は山積み、内情は火の車。

世間の多くの予想は、「フロストは軽い人間だから、ニクソンからは何も聞き出せない」「ニクソンの正当化に利用されるのが関の山」「民衆はニクソンのいいわけなんかを聞きたがっていない」というもので、これがスポンサーがつかない大きな理由でしょう。
しかも、この企画のお陰で、彼がオーストラリアで持っていた番組も降板となった。

 フロストのブレーンたち<マシュー・マクファディン(ジョン・バード)オリヴァー・プラット(ボブ・ゼルニック)サム・ロックウェル(ジェームズ・レストン)>

スポンサー確保に奔走し、ろくにインタビューの内容について議論しないフロストに、ブレーンたちも不信感を募らせる。

インタビューは終始ニクソンペースで進む。
巧みに話の焦点をぼかし、自分の有利に話にすり替えていく老獪さ。
フロストはなすすべもなく、ニクソンが一方的にしゃべりまくるパターンで3日目までを終えた。

インタビュー4日目、この最終日を間近に控えたある夜、フロストの部屋に酔っぱらったニクソンから電話があった。
恫喝、脅し、勝利を確信した男の雄叫びともとれるその電話。
フロストは崖っぷちを悟り、ブレーンの意見を取り入れて調査をし直し、起死回生のインタビューに挑む。

ウオーターゲート事件でのニクソン証言の矛盾を追及し、ニクソンは自らの否を認め、テレビカメラは失意のニクソンの表情を捉えた!!

ここが、天国と地獄の分かれ目だった。
ニクソンは永遠に政界を去り、フロストは時代の寵児として、名声を上げてイギリスに帰っていった。

フランク・ランジェラはニクソンにちっとも似ていません。
でも、高圧的に相手を威嚇する態度、相手に動揺を与える狡猾さなど、イメージにぴったりでした。
ニクソンは弁護士出身なんですね。なるほど。
でも、フロストにやりこめられてボロを出し、自ら犯罪性を認め、謝罪した表情は、人間ニクソンが心情を吐露する姿として好感さえ持てるものでした。

ここが、現実の番組とは違っていたのでしょうね。
当時の人々は、ニクソンのその表情から、謝罪を引き出したと歓喜したはずですから。

ラストも、フロストがイギリスに帰る前に、ニクソン邸を訪ね、挨拶をするシーンでしたが、二人は正々堂々とバトルを演じたことを誇りに思い、相手を敬い、気づかっていました。

いままで、ハリウッド映画でも、悪役として登場していたニクソンですが、この作品で何か人間的なものを感じ、見終わった後がさわやかな作品でした。



ルールなしの殴り合いみたいな、緊張感溢れるインタビューシーンがクライマックスですが、ユーモアもあり、エンタメとしても楽しい映画でした。

フランク・ランジェラはアカデミー賞の主演男優賞にノミネートされていた理由がよくわかりました。
最優秀は取れなかったけど、じゃあ、「ミルク」のショーン・ペンはどんなにいいの?と、さらに興味が膨らみました。