●科学技術ニュース●長崎大学と米国テキサス大学など、 新たな骨の幹細胞「骨内膜幹細胞」を発見

　長崎大学 医歯薬学総合研究科の松下 祐樹 准教授、米国テキサス大学 小野 法明 博士の研究グループは、米国 ミシガン大学などを含む国際共同研究によって、これまで同定されていなかった、骨髄に存在する新たな骨の幹細胞を発見し、「骨内膜幹細胞（Endosteal Stem Cells）」と名づけ、この新たな幹細胞が骨の成長や再生に貢献するとともに、がんの発生の起源にもなり得ることを明らかにした。

　体の成長に伴って骨が伸びたり、骨折の後に骨が元に戻るためには、骨髄に存在する骨の成長や再生を司る幹細胞が大きな役割を果たしていると以前から考えられていたが、その存在は正確には明らかになっていなかった。

　同研究では、小児期、成長期に当たる若齢マウスの大腿骨から幹細胞を含む全ての骨格系細胞を集め、シングルセル解析などデータサイエンスの手法を用いて幹細胞を推定し、さらに細胞運命追跡という手法により、骨髄に存在する新たな骨の幹細胞（＝骨内膜幹細胞）を発見し、その運命を追跡することに成功した。

　その結果、今回新たに同定された骨内膜幹細胞は骨の成長、再生に大きく貢献する非常に重要な細胞であることが分かった。

　一方で、がん抑制遺伝子ｐ53の欠損により、骨肉腫という骨のがんを発生させる起源となることも明らかになった。

　この新たな骨の幹細胞の発見は、将来の骨再生療法への応用や、骨のがんである骨肉腫の病態解明、治療法の開発に貢献することが期待される。＜科学技術振興機構（ＪＳＴ）＞