内閣府 総合科学技術・イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の研究プログラム「脳情報の可視化と制御による活力溢れる生活の実現」の一環として、国際電気通信基礎技術研究所(ATR) のグループは、人が両腕を使いつつ、並行して脳でロボットアームを操作する手法を世界で初めて実現した。
思うだけで機器を操作できるブレイン・マシン・インターフェース(BMI)には多くの期待が寄せられている。しかし、現状の技術では性能が極めて限定的で、また使用者が身体を静止して強く集中することが必要なため、用途が障がい者用などに限られ、技術の汎用化が課題となっていた。
同研究では、人が両腕を使いつつ、BMIを介して脳でロボットアームを操作する実験を行い、高い成功率で操作が可能であることを実証した。
これは、BMI技術の用途拡大に向けた第一歩と考えられる。また同技術は、人のマルチタスク能力など認知能力の解明と向上にも役立つと考えられ、研究の進展が期待される。
今回の実験では1種類の操作意図(ペットボトルをつかむ)しか扱わなかったが、今後の研究の進展により、さまざまな意図を区別して制御できる可能性がある。またアンドロイドの腕を動かす練習をすることで、アンドロイドに限らず、多様な機器を制御できる可能性がある。将来、自分の身体動作と同時に、さまざまな機器を自由に操作できるインターフェースを実現できれば、これまで人間には不可能と思われていた動作も実現できる可能性がある。
また、今回の実験では、うまく操作できる人と、できない人とが明確に分かれることが分かった。これは注意をうまく分散する能力、マルチタスク能力に関わっていると考えらるが、アンドロイドの腕をBMIで動かす訓練をすることで、人のマルチタスク能力を全般的に向上できる可能性が考えられる。