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●科学技術ニュース●徳洲会、大阪大学とリバーフィールド、低軌道衛星通信を活用した移動型遠隔手術システムの世界初の実証実験に成功

2024-08-22 09:37:20 |    ロボット工学
 徳洲会グループ、大阪大学大学院医学系研究科、リバーフィールドは、大阪府八尾市の八尾徳洲会総合病院において、低軌道衛星通信を用いた移動型遠隔手術システムの実証実験を世界で初めて実施した。

 衛星通信による遠隔手術は古くから理論的には可能とされてきたが、これまでは試作ロボットと高額な衛星通信システムを用いた実験レベルにとどまっていた。

 同実証は、薬事承認された手術支援ロボットと、安価で常用利用が可能な衛星通信サービスを活用し、世界で初めて「実用レベルで」遠隔ロボット手術の実現可能性を検証したもの。

 災害が多く、インフラの壊滅的被害により、地上通信網が使用不能となりえる我が国において、このような取り組みを世界に先駆けて実施できたことは大変意義深いと考えられる。

 日本の地方部では深刻な医師不足が続いており、高度な医療へのアクセスが困難な状況にある。

 遠隔手術システムは、この問題解決の「切り札」と期待され、研究開発が進められてきたが、通信インフラの整備にかかるコストや災害時のシステムの脆弱性が課題となっていた。

 近年、ロボット制御技術や低軌道衛星通信技術が急速な発展を見せており、低コストで強靭な遠隔医療システムが現実味を帯びつつある。

 同実証では、リバーフィールドが開発した手術支援ロボット「Saroa サージカルシステム」を以下のように配置し、実験を実施している。

 サージョンコンソール(操作側):八尾徳洲会総合病院の手術室内

 ペイシェントカート(患者側):屋外に配置したトラック内

 低軌道衛星通信には、米国スペースX社が運営する「スターリンク」のサービスを利用した。また、接続のフレキシビリティを確保するため、クラウド上に中継用VPNサーバーを設置している。

 実験には6名の外科医が参加し、通常のロボット手術構成と遠隔のロボット手術構成での比較を行った。

 臓器の弾力性を再現したトレーニング用モデルを用いて、縫合・結紮などの手技(傷口を縫い合わせたり、糸を結んで固定したりする作業のこと)を行った。

 なお、「Saroa サージカルシステム」は、2023年5月に日本国内にて薬事承認を取得したが、衛星通信や、その他通信を用いた地理的に離れた施設間での遠隔手術は、薬事承認範囲に含まれていないことより、同実証には、同実証専用機を用いた。

 実験に参加した医師6名全員から、遠隔のロボット手術構成においても、通常のロボット手術時と同様、縫合や結紮などの繊細な手技が可能であることが確認された。

 さらに、フルHD画質、4Mbpsの滑らかな映像伝送に成功した。また、中継用VPNサーバーにより、固定IPアドレスのない環境でも安定した接続性の確保が確認された。

 同システムは、へき地・離島と都市部の医療格差の是正、災害時の迅速な医療支援、さらには国境を越えた医療支援活動や、あらゆる地域の医師らのトレーニングに幅広く活用できる可能性がある。<リバーフィールド>
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