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改めて品質管理を考えよう その6

2017年02月16日 | ブログ
人質(じんしつ)管理

 『「うちの工場で一所懸命“品質管理”をやっているやろ。それはとても大事なことやけど、それより大事なんは“人質(じんしつ)管理”やで」。』

 この話は、松下電器工業(現、パナソニック)の創業者松下幸之助氏が、同社の四代目社長を務めた若かりし頃の技術者であった谷井昭雄氏に述べたものだという。

 品質管理は、ものやサービスに対して行うもので、従業員の質まで問うものではないかも知れず、幸之助氏が切り離して諭されたことは間違いではないし、寧ろ従業員の質を何より重要と考える経営姿勢は、優れたものであったと思う。

 しかし、「TQC(TQM)は教育に始まり教育に終わる」と言われるくらい、品質管理では、実は従業員の質の向上を第一義に考えていることも事実だ。

 「ISO9000を取得するために、品質管理組織を構築し、標準書を整備し、品質目標を立てて活動したけれど、一向に業績は向上しない。」のような不満が結構あって、ISOも実の(業績に結び付く)ある品質管理活動を求めて、改訂を繰り返してきた。しかし、取得企業の経営者の想いが空回りし、従業員まで十分浸透しておらず、体裁を整えただけに終わっていることはなかったか。やはりここでも、そのための教育が最重要になってくる。大手企業なら兎も角、ISO9000の要求事項やその趣旨を十分読み解き理解できる従業員の限られる企業では、繰り返しの教宣活動を続けるしかない。なぜそこまで教育が必要なのか。標準書に潜むその作業のコツだけでなく、その製品を使う顧客の笑顔を思えるようになること、それこそが仕事の楽しさでもあることを知るまでが、品質管理なのだからである。

 今もあることだろうけれど、以前は花嫁修業として日本古来の琴や華道、お茶などを学ぶ若い娘さんが多かった。会社の社宅でも、集会所などを利用して、年配のご婦人を先生に招いて、そんな会合が持たれているのに遭遇したことがあった。その時の講師の老婦人の佇まいに接して、習い事そのものより、先生の人間に触れることが修行になるのだろうと思ったものだったけれど、品質管理における人づくりも同様である。

 現在トヨタ自動車は、自動運転に向けて同業他社に類を見ない相当額のAI研究投資(5年間で1150億円:日経ビジネス2017.02.06号)を行っているそうだが、その豊田社長は、「改善、改善、改善、改善が改革につながる」と檄を飛ばす。それは、いかに科学技術が進歩しようが、特定の技術者だけが頑張ったのでは世界の競争には勝てないことを心底知っている経営者の言葉だ。人質管理こそ大切とする、日本式品質管理は優れた企業には未だ健在なのだ。
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