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改めて品質管理を考えよう その5

2017年02月13日 | ブログ
サンプリングの重要性

 品質管理の現場での実務は、通常サンプリングから始まると考えていいだろう。その後工程分析、出荷検査などを経て顧客に製品が納入され、そこで不具合が見つかるとクレームとなって品質管理部門にお叱りが来る。それらの個々の工程に本来重要度に差はないが、出荷検査とかクレーム対応のように、顧客とのインターフェイス(業際)にかかる業務は兎角関心が集まるが、顧客から遠いサンプリング工程などには関心が薄くなりがちである。検査部門に提出されるサンプルがどのように採取されたかなど、あまり関心が払われない。しかし、このサンプリンがもしいい加減であったら、その後の検査データ、その解析などの前提が崩れてしまう。サンプリングは地味だけれど、神経を使わねばならない非常に重要な業務なのである。

 テレビドラマの刑事ものの多くには、科学捜査として「鑑識」部門からデータを得て証拠固めを行う筋立てが結構あるけれど、果たして「鑑識」なるものが、錦の御旗となりうる絶対正義であるかどうかは本来分からない。

 現実にDNA鑑定の精度の問題から逆転判決が出た事例があったように、そのサンプルはどのような状況の中からどのように採取され、どのように検査されたか。検査までの過程で異物などが紛れ込むようなことはなかったか。検査は誰がどのような機器を用いて行い、結果について誰が承認したか。

 東京都の豊洲新市場の問題がある。舛添知事時代の6回にも及ぶ調査では検出されなかった物質が、知事が代わるとなぜ検出されるようになったのか。その数値も環境基準の79倍のベンゼン、ヒ素も環境基準を超えていたとのことで、さらに一度も検出されなかったシアン化合物も検出されたという。

 ある方は、マスコミは高校生レベルの化学の知識も持たず騒いでいると揶揄しているが、確かに、どこの分析会社に依頼し、その分析会社では、誰がいつ、どこからどのようにサンプリングし、どのような機器を用いて分析し、その結果を示すチャート、機器の校正の記録はどうなっているのか、ほとんど触れられていない。そして、その結果の数値だけが独り歩きし、都民の不安を煽っている。(先日のサンプリングの模様は公開されていたようだ)

 サンプリング箇所は、建物のこの部分、あの部分の地下水であるような報道は目にしたことがあるが、そもそも豊洲新市場の下の地下水というのは幾筋も分かれて流れているのか。さらに滞留している部分もあるのか。

 元々工場の跡地なのだから、土壌が化学物質で汚染されていた恐れは当然にある。だから汚染土を可能な限り除去し、新たな土で盛り土をする計画で、新たな汚染がなくなれば、時間の経過とともに、自然浄化が進む筈で、ここに来てデータが悪化することは異常である。

 地下水の水脈を明らかにし、水脈のどこから採取したサンプルを分析したのか。出来れば、現在の築地市場の地下水と比べて有害物質がどの程度多いのか等相対比較も必要な気がする。

 豊洲を選んだことや、初期の計画通りに盛り土がされていないとか、出来上がった建物の使い勝手が悪いのだとか、行政上に不備・不正があるなら別途糾弾すべきであろうが、それらを地下水の分析結果と混同して論じるのは問題である。

 いずれにしても、環境測定は、水質にしても大気にしてもサンプリングからして難しい場合が多く、またいずれにしてppmオーダーを扱う分析である。誤差の程度も明瞭になりにくい。だからこそ結果の数値に振り回されるのではなく、もっとクールに全体像を見つめ直し、本来の目的である健康被害の有無を見極めることが必要であろう。




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