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現場力について考える第10回

2015年03月28日 | ブログ
見える化

 見える化の代表は、街中やロードサイドに見る看板である。兎も角目立つことで、自己店舗に客を呼び込む効果を狙っている。飲食店店頭の食品サンプル模型やメニュー看板、ショーウインドーなども見える化であろう。甚だしく景観を損ねる看板は問題だが、街中の看板は利用者には店探しが容易となり、食品サンプルも何を食べるかの事前検討に有益であり、顧客の利便性に貢献する。この「見える化」と現場力の関係で言えば、店内POP(ポップ広告)などもそうだが、店舗管理の一環としてその巧拙は、売上に直結する。

 ただ、企業活動で「見える化」という時、看板のような顧客向けではなく、通常身内で見えない物を見えるようにする活動を意味する。現場の実態をリアルタイムで見えるようにして、情報を共有化することで、現場力を向上させようという取り組みを「見える化」活動というのである。

 ただし、営業成績や歩留まりの数値をグラフ化して掲示したり、ビジュアルモニター画面を設置して、諸々のデータがリアルタイムで見られるようにすることは、確かに「見える化」のようであるけれど、次のアクションにつなげる仕組みがなければ成果につながらない。真の「見える化」ではないのである。

 最近の省エネ車は、燃費(km/l)の瞬時値がダッシュボードにデジタル表示されていたりするけれど、この数値に注目しながらアクセルの踏み方を加減して運転すると、確かに燃費向上に有効である。これなどは見える化のヒットのひとつかも知れない。

 「現場力を鍛える」の著者でもある遠藤功氏の著書「見える化」(強い企業をつくる「見える」仕組み)2005年10月、東洋経済新報社刊によれば、「見える化」を5つのカテゴリーに分類している。すなわち、カテゴリー1.「問題の見える化」として、①「異常の見える化」、②「ギャップの見える化」、③「シグナルの見える化」、④「真因の見える化」、⑤「効果の見える化」の5つがあり、カテゴリーの2番目は、「状況の見える化」で、①「基準の見える化」、②「ステータスの見える化」、カテゴリー3.「顧客の見える化」では、①「顧客の声の見える化」と②「顧客にとっての見える化」を上げ、カテゴリー4.「知恵の見える化」には、①「ヒントの見える化」、②「経験の見える化」、最後のカテゴリー5.「経営の見える化」となっている。

 このうち、カテゴリー3.②「顧客にとっての見える化」は看板や食品サンプルのことではなく、『顧客の声や要望を一方通行的に吸い上げるだけでなく、「顧客にとって」必要な情報を効果的に発信し、双方向の「見える化」を実現すること』とある。

 カテゴリー1.から4.は、企業活動のオペレーション上の問題解決を促進するための仕組みで、現場力を支え、OC(Organizational Capability:組織能力)の向上に貢献する。カテゴリー5.は、経営者のための「見える化」である。経営者はその監督責任を果たすため、本来現場の問題解決活動のタイムリーなモニタリングを必要とする。また、対外的に自社の経営状況を「見える化」する説明責任もある。コンピュータシステム導入も含め、確度の高い「見える化」策を実施すると共に、対応して素早い次のアクションにつなげてゆかねばならない。



 本稿は、「見える化」(強い企業をつくる「見える」仕組み)遠藤功著、2005年10月、東洋経済新報社刊を参考にし、『 』内は直接の引用です。

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