「シグマ(σ)の話」
元々の品質管理の目的は、製品品質のバラツキを小さくするためのもので、このバラツキの定量的な指標として、標準偏差(σ)が用いられることはよく知られている。すなわち世の中のバラツキの確率分布は多くの場合に正規分布で近似でき、その分布に占める割合や序列がこのσ値から算出できるため、統計解析において非常に重要なものとなっている。
受験生の能力指標として「偏差値」というのがあるが、これも標準偏差を利用したものであることも有名な話だ。製造工程の見える化に活用される「管理図」も、管理限界線をσ値の中心線から上下3σの数値を使う。
工程能力指数とは、規格幅に対してどれだけ小さいバラツキで製造できているかを定量的に示すものだが、これもσ値を基に計算される。納入規格をこれまでの当該製造工程で産出した製品特性値のバラツキの標準偏差からその5倍(5σ)に設定して、製造基準は3σ、出荷規格を4σで管理すれば、顧客に不合格品を届ける確率は非常に小さくできる。
工程能力指数(製品特性値のバラツキ(σ値)が規格幅に3個入る場合を1とする)は、1.33から1.67を良好な範囲と考えるが、これは規格幅に4個から5個入るレベルであり、シックスシグマ活動の不良割合の目標である3.4ppmは、片側4.5σの不良率である。
6σで管理(規格幅に特性値のσが6個入るレベル)できれば、その不良率は10億分の2である。すなわち2ppb。しかし、長期的な工程管理では1.5σ分中心がずれることを見越して3.4ppmとしたものだ。
シックスシグマ活動を提唱し実践した米国モトローラは、当然同じ活動を日本モトローラ(株)でも展開した。その資料が手元にある。資料には、当時の普通の企業の工程能力を4σから1.5σシフトしたレベルと捉え、目標であるシックスシグマ(6σ-1.5σ)達成は、現状の100倍の改善効果があると謳っている。不良率が現状の100分の1になると言っているのである。その経済効果(累積)を同社の製造部門で2,860億円、非製造部門でも約1,300億円と試算している。
正規分布は、中心部をピークとし両裾が急激に低下しており、σ値が中心(平均値)からの距離を指しているから、1σから2σ、3σと急激に外れの面積は減少する。すなわちバラツキの指標である標準偏差値を小さくすることで、規格内に収まる特性値を持った製品を大幅に増やすことができる。すなわち歩留まりを上げることにつながるのだ。
モトローラではこのσ値拡大のインパクトを、分かりやすく説明するために、時計の遅れや本の誤字などの確率で示している。管理状態が1σでは、本の1ページ中に170語程度の誤字を生じるのに対して、3σレベル(工程能力指数=1.0)では、1.5語まで減少するが、さらに6σでは小さな図書館の蔵書全体で1語となる。時計の誤差で考えると1σで100年間に31.75年、3σでは3.5か月の狂いを生じるが、6σではその誤差は100年で6秒である。(バラツキの中心からのシフトは考慮しない)
統計的品質管理においては、機差などで変化する特性値の有意差やバラツキなども検証するが、勿論この標準偏差(σ)がベースとなる。なお、通常の工程から採取したサンプルの特性値測定による標準偏差はs(スモールエス)が使われ、サンプル数から1を減じた数(n-1)で偏差平方和を割ったものから求めることになる。
元々の品質管理の目的は、製品品質のバラツキを小さくするためのもので、このバラツキの定量的な指標として、標準偏差(σ)が用いられることはよく知られている。すなわち世の中のバラツキの確率分布は多くの場合に正規分布で近似でき、その分布に占める割合や序列がこのσ値から算出できるため、統計解析において非常に重要なものとなっている。
受験生の能力指標として「偏差値」というのがあるが、これも標準偏差を利用したものであることも有名な話だ。製造工程の見える化に活用される「管理図」も、管理限界線をσ値の中心線から上下3σの数値を使う。
工程能力指数とは、規格幅に対してどれだけ小さいバラツキで製造できているかを定量的に示すものだが、これもσ値を基に計算される。納入規格をこれまでの当該製造工程で産出した製品特性値のバラツキの標準偏差からその5倍(5σ)に設定して、製造基準は3σ、出荷規格を4σで管理すれば、顧客に不合格品を届ける確率は非常に小さくできる。
工程能力指数(製品特性値のバラツキ(σ値)が規格幅に3個入る場合を1とする)は、1.33から1.67を良好な範囲と考えるが、これは規格幅に4個から5個入るレベルであり、シックスシグマ活動の不良割合の目標である3.4ppmは、片側4.5σの不良率である。
6σで管理(規格幅に特性値のσが6個入るレベル)できれば、その不良率は10億分の2である。すなわち2ppb。しかし、長期的な工程管理では1.5σ分中心がずれることを見越して3.4ppmとしたものだ。
シックスシグマ活動を提唱し実践した米国モトローラは、当然同じ活動を日本モトローラ(株)でも展開した。その資料が手元にある。資料には、当時の普通の企業の工程能力を4σから1.5σシフトしたレベルと捉え、目標であるシックスシグマ(6σ-1.5σ)達成は、現状の100倍の改善効果があると謳っている。不良率が現状の100分の1になると言っているのである。その経済効果(累積)を同社の製造部門で2,860億円、非製造部門でも約1,300億円と試算している。
正規分布は、中心部をピークとし両裾が急激に低下しており、σ値が中心(平均値)からの距離を指しているから、1σから2σ、3σと急激に外れの面積は減少する。すなわちバラツキの指標である標準偏差値を小さくすることで、規格内に収まる特性値を持った製品を大幅に増やすことができる。すなわち歩留まりを上げることにつながるのだ。
モトローラではこのσ値拡大のインパクトを、分かりやすく説明するために、時計の遅れや本の誤字などの確率で示している。管理状態が1σでは、本の1ページ中に170語程度の誤字を生じるのに対して、3σレベル(工程能力指数=1.0)では、1.5語まで減少するが、さらに6σでは小さな図書館の蔵書全体で1語となる。時計の誤差で考えると1σで100年間に31.75年、3σでは3.5か月の狂いを生じるが、6σではその誤差は100年で6秒である。(バラツキの中心からのシフトは考慮しない)
統計的品質管理においては、機差などで変化する特性値の有意差やバラツキなども検証するが、勿論この標準偏差(σ)がベースとなる。なお、通常の工程から採取したサンプルの特性値測定による標準偏差はs(スモールエス)が使われ、サンプル数から1を減じた数(n-1)で偏差平方和を割ったものから求めることになる。